第二章 王都への反撃
第十話 力の代償
「はぁぁ!!!」
勇樹は巨大な獣に剣を振る。
「剣筋が甘い。 もっと引き締めろ」
モンスターは勇樹を指導する。
少し前。
勇樹はモンスターを手伝うと誓った後、ある森の入り口に来ていた。
なんでも、この森には巨大な獣が住み着いているらしい。
「行くぞ」
モンスターは森に向かって進み始めた。
「は、はい」
勇樹はモンスターについて行く。
「あの…。 やっぱり、特訓とは言えいきなりこんなヤバい所に行くのは流石に…」
勇樹は歩きながらモンスターに話しかける。
「強い敵と戦った方がスキルポイントが多く溜まるだろ。 安心しろ。 私がついている限り君が死ぬことは多分無い」
多分って何だよ。
勇樹は心の中で言う。
「あの…。 スキルポイントって何ですか? えっと…」
勇樹はモンスターの名前を呼んで質問しようとしたが、名前が分からなかったので、少し戸惑う。
「私の名はガイコスだ。 スキルポイントって言うのは、スキルを解放するときに使うポイントの事だ。開放するスキルが強ければ強い程、スキルポイントを多く使うんだ」
「そのスキルポイントっていうのはどうやって手に入るんですか?」
勇樹はもう一つ疑問をぶつける。
「スキルポイントはモンスターを倒したときに手に入るんだ。 モンスターが強ければ強い程、手に入るスキルポイントも多いって訳だ」
なるほど。
だからこんな危険な森を特訓所にしたのか…。
勇樹がそんな事を心の中で思っていると。
「ほら、着いたぞ」
勇樹達が辿りついた場所は、毛は黒く、凶暴な牙を出しながら眠っている巨大な獣の所だった。
「え、いきなりこんなヤバい奴と戦うんですか? 最初はもっと小柄なモンスターの方が…」
勇樹はここはやめた方がいいとガイコスに訴える。
「何を言っているんだ。 10日後に奴らが来るんだぞ。 ダラダラと鍛えてる時間はない。 特訓は効率よくしないとな」
勇樹の考えはすぐに切り捨てられる。
「さぁ、あいつを倒してこい」
ガイコスは獣に指を指しながら勇樹に言う。
「え、一緒に戦ってくれないんですか!?」
勇樹は不安な顔になりながらガイコスに言う。
「私はピンチになった時だけ加勢する。 基本は君1人で戦うんだ」
嘘だろ。
勇樹は少し絶望しながら少しづつ獣に近づいていく。
勇樹と獣の距離が10cmぐらいになった所で勇樹は獣に剣を振る。
「はぁぁ!!!」
しかし、ダメージはまったく通らず、獣が眠りから覚める。
「剣筋が甘い。 もっと引き締めろ」
ガイコスは冷静に勇樹を指導する。
「ガルルゥゥゥ…」
獣は勇樹に威嚇する。
「ガウッ!
獣は勇樹に飛び掛かる。
あ。
ヤベェ。
勇樹は死を覚悟する。
「デスファイア」
ガイコスはそう唱えると、獣に向かって勢いよく紫の炎を飛ばす。
獣と勇樹は炎に包まれる。
「ガルァァァァ!!」
獣は大きく叫ぶ。
「うわわぁぁ!! ってへ?」
勇樹にはまったくダメージが無く、獣だけ大きなダメージを喰らっていた。
やがて獣は灰になり、勇樹とガイコスの経験値となる。
勇樹とガイコスの前には戦闘結果のウィンドウが出る。
そこにはこう書かれていた。
戦闘結果
高橋勇樹:52Exp 2SP
ガイコス:426Exp 12SP
「あの、SPとExpってなんですか?」
勇樹はガイコスに質問する。
「SPってのはスキルポイントの略称で、Expは経験値の事だな。 今回は私がモンスターを仕留めたから私の方が多くSPとExpが貰えたな」
「あの、助けてくれてありがとうございます」
勇樹はガイコスに頭を下げてお礼する。
「ピンチになったら加勢するって言ったろ。 ダラダラしてる時間はない。 効率よく行くぞ」
「は、はい!」
そう言うとガイコスは次のエリアに向かい始め、勇樹はガイコスについて行く。
そうして日にちが過ぎて行き、特訓5日目。
勇樹のステータスはこうなっていた。
高橋勇樹 Lv36
HP:25 MP:15
状態異常:ゴブリンの呪い
所持SP:26
攻撃力:37 防御力:35
魔力:21 運:12
素早さ:82
スキル:超加速 隠密 みやぶる スターブレイク 剣の舞 氷結の刃
なんと勇樹はたった5日間でレベルが34も上がっていたのだ。
しかも、勇者しか覚えられないスキル『スターブレイク』、上級騎士しか習得できないスキル『剣の舞』『氷結の刃』を覚えていたのだ。
「あ、あの! ありがとうございます!!」
勇樹はガイコスに頭を深く下げて何度もお礼する。
「君を強くさせたくて強くしたわけじゃない。 これも全て私と亜人達のためだ」
それでも勇樹は嬉しかった。
まさか自分があんなに強くなるなんて思ってもなかった。
勇樹はもう一度心の中でガイコスにお礼をする。
「さぁ、今日は洞窟に住むドラゴンの討伐をするぞ。 ドラゴンは貰えるSPが高いんだ。 ついて来い」
「は、はい!」
ガイコスは洞窟に向かって歩き始め、勇樹はそれについて行く。
洞窟に入ってから約5分。
早くも勇樹達はドラゴンの所に辿り着いていた。
「グオァァァァ!!!」
ドラゴンが大きく勇樹達に叫ぶ。
「さぁ、戦え」
ガイコスは勇樹に戦えと命じる。
「あ、あの。 覚えたスキルを使ってもよろしいですか?」
実は勇樹はまだ覚えたスキルを一度も使ったことが無かったのだ。
「ああ。 構わない」
勇樹は勇者しか使えないスキル『スターブレイク』を使おうとする。
勇樹の件は神々しく青色に光り、勇樹はドラゴンに向かって構える。
「はぁぁぁぁ!!!!!」
勇樹は叫ぶと思いっきりドラゴンに突っ込んで行き、剣で切りつける。
「グラァァァァ!!!!」
ドラゴンは大きく叫び、勇樹の経験値となった。
勇樹は初めて一人で大型モンスターを倒せたことに喜びを感じる。
しかし、勇樹には剣で切りつけた感触は無かった。
勇樹は剣を持っていた右腕に違和感を感じて、右腕を見る。
勇樹の右腕は地面に落ちていた。
勇樹の右腕はちぎれていたのだ。
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