第四話 外せない呪い

「は?」


勇樹は何度も何度も自分のザラザラとした荒々しい肌を触りながら川を見る。


そして、何度も何度も自分の汚い手で目を擦る。


「おいおいおい、幻覚にも程があんだろ・・・」


勇樹はまだ自分がゴブリンである事を認めない。


そんなことを思いながら、勇樹が困った顔をしていると。


ブォン。


「うわぁ!」


勇樹の前にいきなり大きなウィンドウが出る。


「なんだよ、ビビらせんなよ・・・」


そのウィンドウの一番上には【ヘルプ】と大きく書いてあり、その下にはこの世界


に関するいろいろな事が書かれている。


勇樹は左下に書いてあった【見たい項目に意識を集中させてください】という文字

に気づく。


「え? そんだけでいいの?」


勇樹はヘルプの中にあった【スキルの発動の仕方】に意識を集中させる。


ブォン。


ウィンドウの上に新しいウィンドウ、【スキルの発動の仕方】が表示される。


「おお! すげぇぇ!! 本当に出た!」


そこにはこう書かれてあった。


【自分が『助けて!』や『困った!』とか思っている時に、自分が習得しているスキルの中から最適なスキルを選び、自動で発動します。(自分で発動することも可能です)】


「なるほど・・・。 だからさっき急に足が速くなったり、透明になったりしたんだな~。ていう事は、さっき急に出てきた【ヘルプ】も俺が『困った!』って思ったから出てきたわけか。じゃあ・・・・」


勇樹は『このウィンドウを消したい!』と心の中で思う。


シュン。


勇樹が心の中で思うのと同時に、【スキルの発動の仕方】というウィンドウが消えた。


「やっぱり! 俺って超天才!」


次に、勇樹はヘルプの中にあった【ステータスの見方】に意識を集中させる。


目の前に【ステータスの見方】というウィンドウが表示される。


「ほぉ~。 心の中で『ステータスを見たい!』と思えば表示されると。ていうか、自分が思ったら出てきてくれたり、発動したり、異世界って便利だな!」


勇樹は心の中で『ステータスを見たい!』と言う。


すると、2つのウィンドウが消され、ステータスが表示される。




 高橋勇樹 Lv2


 HP:25 MP:15


 状態異常:ゴブリンの呪い


 攻撃力:6   防御力:4 


 魔力:2     運:1


 素早さ:15


 スキル:超加速 隠密 みやぶる



「は?」


勇樹は自分の弱すぎるステータスに失望する。


「いや、ちょっと待てよ、勇者って普通ぶっ飛んだ能力とかだろ? なんで素早さだけ高いんだ?  ていうか、この『ゴブリンの呪い』ってなんだよ・・・」


すると、勇樹の前に【ゴブリンの呪いについて】というウィンドウが表示され、こう書いてあった。


【ゴブリンの呪いにかかると、見た目とパラメータと能力がゴブリンと一緒になります。この呪いは、この世界『ディスペアー』を救うまで外せません】


「じゃあ、俺は本当にゴブリンに・・・。勝手に連れてこられて、急に魔物扱いされるんて、酷ぎんだろ・・・」


勇樹が一人で失望していると。


「う、うわぁぁ!! 誰か、助けてくれ!!」


20代くらいの男の声がした。


「誰かが助けを呼んでる!! でも・・魔物扱いされるかもしれないし・・・。

 いいや、人の命の方が大事だ! よし! 超加速!」


勇樹は声がする方向にものすごいスピードで走る。


だんだん男の姿が見えてきて、目の前には2体の80センチぐらいのモンスターがいる。


男は王国の兵士のような格好をしており、腰には剣を着けているが、地面に投げ捨てられた跡がある。


体形はミスタリーのようにガタイは良くなく、ヒョロヒョロした体だ。


「うりゃー!」


勇樹は走った勢いで1体のモンスターに切りかかる。


しかし、びくともしない。


「クッソ、こうなったら! みやぶる!!」


勇樹は弱点をみやぶるスキル、【みやぶる】を使う。


すると、モンスターの弱点部分が赤く光る。


「隠密!」


勇樹は透明になり、モンスターの弱点に5発短剣で切り刻む。


「ヴァァァァ!!」


雄叫びと共にモンスターが倒れる。


それと同時に隠密が解除される。


「あとは一匹!」


「ヴァァ!!」


モンスターが口から火を吐いて攻撃する。


「よっと!」


軽やかに体を動かし、全身を使って炎を避ける。


勇樹は大きくジャンプする。


「ゲームオタクの力、なめんなよ!!!」


上からモンスターの弱点をぶっ刺す。


「ヴァァァァァ!!!」


最後のモンスターは倒れ、「ふぅ」と息を吐く。


「いや~本当に筋トレと柔軟は続けるもんだな!」


勇樹が額の汗を手で拭く。


「ほら。 大丈夫か?」


勇樹は男に手を差し伸べる。


すると、男は走って近くの剣を手に取る。


そして、男は足を震わしながら勇樹に向かって刃を向ける。


「う、動くな! 喋るモンスターめ! 殺してやる!」


「違う違う! 俺は『良い』モンスターだよ! ほら、こうやってお前を助けたのも俺だろ?」


勇樹は手を横に振りながら言う。


「う、嘘つけ! 僕を騙そうと演技したんだろ! 騙されないぞ!」


勇樹の声は男の声で消される。


「クッソ・・・。 なんなんだよ・・・・。どいつもこいつも俺を悪者扱いしやがって!! どうして皆、お礼の一つも言ってくれないんだよ!! 俺は何もしてないのに!!」


そういうと、勇樹は最後のMPを振り絞って超加速で男から離れる。



その時、勇樹の心の中に『怒り』という名の炎が灯された。

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