第三話 恐怖という名の感情
村に到着した勇樹は満面の笑みで村に堂々と入る。
「さてと、まずは村人に聞き込み調査かな。 確かこのルートだと、
村人に話を聞いた後に王国に行くんだった気がするけど・・・」
そんなことを考えながら勇樹は村にいた男に話しかけようとする。
「あの、すいません。 このあたりに王国ってあります・・・」
聞こうとした瞬間。
「うわぁぁーーーーーー!!! も、モンスターだ!!」
「は? おいおい、開幕からそうそう冗談はよせって!」
勇樹は手を横に振りながら言う。
「ち、近寄るな!! 誰か!! 助けてくれ!!」
男は助けを呼ぶ。
するとガタイのいい30代くらいの髭が生えた鎧を着た男が大剣を持って、
勇樹のいる方向に走って向かってくる。
「うぉぉぉーー!!」
鎧を着た男は雄叫びをあげながら大剣を勇樹に向かって振り回す。
「うわぁぁぁーーー!!」
勇樹は悲鳴を上げながら男の攻撃をギリギリ避ける。
「あ、あぶねぇだろ!! なにすんだ! 俺は世界を救う勇者様なんだぞ!!」
「あぁ? なに言ってんだ? って、このモンスター会話できるのか!?
まぁ、そんなこと関係ねぇ。 この王国一番の大剣使い、『ミスタリー』様が
ぶっ殺してやるぜ!」
そういうと、男はまた勇樹を殺意全開で大剣で切断しようとする。
「おいおい、マジかよ・・・。 こんなイベントなんてなかったぞ!?
と、とにかく逃げろぉぉぉーー!!!」
勇樹が逃げようとした瞬間。
【スキル:超加速を発動します】
というアナウンスが流れる。
すると、勇樹はありえないぐらいの足の速さで村を出て、草原を突っ走る。
「待てぇぇぇぇぇーーーー!! ぶっ殺してやるぅぅぅーー!!!」
ミスタリーもその跡を追うように勇樹を全速力で追う。
「ヤバい、ヤバい、ヤバい!!! どっかに隠れなきゃ!!
あ、あの草むらに隠れよう!!」
勇樹が膝を曲げ、草むらに隠れようとすると、
【スキル:隠密を使用します】
というアナウンスが流れ、勇樹の体が徐々に透明になる。
「へ? って、なんじゃこりゃーーー!! あっっ!!
勇樹は口に手を抑える。
「ヤバい、大声出しちゃいけねぇぇ・・・」
口に手を抑えながら勇樹が言う。
勇樹は草むらの隙間から外を覗く。
すると、まるでタイミングを合わしたかのように、ミスタリーが勇樹が隠れている草
むらの近くに到着する。
「クッソ・・・・。 どこいきやがったあのモンスター・・・。
次会ったときはぶっ殺してやる!!」
その言葉に勇樹は恐怖を感じた。
勇樹はミスタリーが草むらから遠くに離れるまで隠れる。
やっとミスタリーが草むらから離れたのと同時に、勇樹は草むらから立ち上がる。
「はぁぁ・・・。 ようやく居なくなってくれたよ・・・。
それにしても、初日から辛すぎでしょ、世界の勇者様。
ていうか、あんなおっさんに襲われるイベントなんてあったっけ?
これからどうやって世界救えばいいんだよ・・・」
そういうと、勇樹は近くの川で疲れた顔を洗う。
「ぷっはぁぁぁーーー! 水って気持ちいい!!
それにしても、なんでみんな『モンスターだ!』とか言って
逃げていくんだろうなぁ・・。 変なアナウンスも流れるし・・・」
そう言うと、勇樹はもう一回顔を洗おうとする。
その瞬間。
勇樹は川に映った自分の顔に背筋が凍った。
勇樹がこの世界で一番弱いモンスターと選択した、『ゴブリン』になっていたことに。
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