第二話 俺は世界の勇者様?

「ん・・・? どこ、ここ?」


勇樹は横になっていた体を起こし、周囲を見回す。


周囲には草原が広がっており、色が透き通っているほど綺麗な川がある。


森林も広がっており、その近くには小さな村が一つある。


「確か、俺はエンディングを見てたら選択肢が出てきて、そしたら光に吸い込まれたんだっけ。なんか背が小さくなった気もするな・・・。 ていうか、なんで俺は右手に短剣みたいな物を持ってんだ?」


そう言いながらも、勇樹は辺りを歩き回る。


「キャーーーーー!!」


悲鳴が聞こえる。声からして多分女の子だろう。


「だ、誰かの悲鳴がする!!」


勇樹は悲鳴がする方向に向かう。


女の子の所に着いたと同時に、その光景に勇樹は驚く。


女の子が何者かに襲われているのは、勇樹は何となくわかっていた。


だが、女の子を襲っているのは動物でもなく、人間でもない。


女の子を襲っていたのは、耳が長く、背は小さい得体のしれない現実離れをした怪物。


いわゆる『モンスター』という奴だ。


「ええぇぇ!!! 嘘でしょ!? 何だよあのモンスター!? と、とにかく助けなきゃ!」


勇樹は右手に持っていた短剣でモンスターに切りかかる。


しかしまったく効いていないのだろうか、びくともしない。


「え!? 嘘でしょ・・・」


それでも勇樹は短剣で何度もモンスターに切りかかる。


11回目くらいでようやくモンスターの体力はなくなり、体が消え始める。


『なんで・・お前もモンスターなのに・・』という言葉を小さい声で残しながら。


「ふぅぅ・・。 大丈夫?」 


勇樹は女の子に手を差し伸べる。


しかし、女の子は「キャーーーーー!」という悲鳴を上げ、逃げて行ってしまった。


「え? そんなに怖がらなくてもいいのになぁ・・・。 なんかショック・・・」


パパパパーーン。


【レベルアップ!】という音声と共に効果音が流れ、同時に勇樹の前にウィンドウが出現する。


「なになに・・・。 あなたはレベル1からレベル2にアップしました?

何だこれ、まるでゲームだな。ていうか、これってさっき俺がプレイしていたゲームとめっちゃ似てね? まさか・・・これは、彼の有名な『異世界転移』という奴か!?」


勇樹は嬉しそうな顔をするとガッツポーズをした。


「そうかそうか! 俺は異世界転移したのか! ていうことは、俺はこの世界を救う

勇者様って事かな!! いや~ついにこの時が来たのか!! よ~し、そうと分かれば近くの村に出発だ!!」


勇樹はニコニコしながら近くの村に向かう。


この後、地獄のような人生が待っているとも知らずに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る