Ⅲ.星間宇宙 中継衛星〈マーズ〉
『〈シュー〉号より三度目の
『AIの叛乱ではないことを強調しておきます』
『ほぅほぅ。ではライフセーバーが、賞金や副賞に目がくらんだわけでもないと?』
『貴方がた人といっしょにしないでほしいものですね……その賞金について視聴者のみなさんへ説明するのはどうですか、ジン?』
『わぁかりました、パーカー! さすが空気のよめるAI。尺の取り方もばっちりだ!』
『私に空気は不必要ですが』
『コホンッ……では、改めて〈SUN-X〉の賞金についてご説明いたしましょう!
賞金システムはいたってシンプル。大会の優勝者すなわち、太陽へもっとも近づいた者には〈ラー〉の称号があたえられ、太陽系イチの命知らずとして後世にまで語り継がれる英雄となるのでありますっ! 〈ラー〉の栄誉にくらべれば、賞金なんて……たったの六百六十六億
『わーお』
『パーカー、この額っていったいどのくらい?』
『リュウグウ型小惑星を三百二十五個、箱庭と宮殿を建てて地球産のオーガニックな食料品だけで一生、暮らしても余りあるくらい』
『だそうですよ、みなさん?』
『あと副賞、ジン』
『そうでしたっ! こちらのほうが貴重かもしれません。パーカー、発表していただけますか?』
『……地球の永住権です』
『ファンタスティックッ! そのとおり。今大会の副賞は、記念大会ということで、各スポンサーのご尽力により、なんとっ!……優勝者にはわれらがふるさと、地球の永住権が贈与されるのでありますっ』
『ジン、そろそろ最初の船が〈PSP〉を通過します。説明をしても?』
『もっちろん、パーカー。今大会で最大出力のエンジンを搭載した〈ネフティス〉号ですね。順調に〈PSP〉を通過しそうだぁ!』
『基準距離地点ともよばれる〈PSP〉ポイントは、〈SUN-X〉の真のスタート地点といえます。これより太陽へ接近するためには、太陽自身の厖大なエネルギーと、不定期に巻きあがるプロミネンスの脅威に耐えなければなりません。出場者は、レースの過酷さを思い知ることになるでしょう』
『ですが! 〈PSP〉ポイントを通過した〈バーンド〉には、結末にかかわらず、スポンサーより参加賞金が授与されますよ!』
『〈PSP〉を通過すれば、契約履行とみなされるので、違約金を支払わなくて済むことのほうが一番でしょうが』
『パーカー! 七世紀もまえの記録すら超えられないようなら、船から生活物資まで面倒をみてくれるスポンサーに失礼ではありませんかっ!』
『……』
『え〜、たったいま、太陽活動監視局より最新情報が入りました。ふむふむ、なるほどぉ~』
『ジン、自己満足しないでください』
『失礼しました。どうやら、お天道さまもこのレースを盛りあげてくれそうだっ! プロミネンスの大発生警報が発令されました!』
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