第9話 教室での大告白



「さて、大地くんよ。俺がなんで怒ってるか分かりますか?」

 俺はあえてドスの効かせた声で大地にいた。

「えっと…その……」

 教室の隅っこで、チビの俺にガタガタ震えるガタイのいいマッチョ坊主。はたから見たらものすごく異様な光景だろう。

「なんで授業休みのことポロッとなぎの前で言っちゃったのかしら?ん??」

「ごめんて~!反省してるから首を絞めようとしないでーーー!」

「きぇぇぇぇぇ!!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

 俺が強く首を絞めるフリをすると、そのままノってくる大地であった。

 ちなみになぎ松雲まつくもさんはというと、


「桜里ちゃんと女の子同士のお話があるからお昼休みのキャッチボール、今日はパスで~!」

 と言ってお弁当食べ終わり次第そそくさと教室を出ていってしまった。

「えぇ、なんでぇぇぇ……」

 と松雲さんが叫びながら連れ出されていたのが気になったけども。


「さて、それでは授業休みにしたかった話をしようか」

 さっきまでの茶番が一段落し、俺と大地はお互いに向かいあわせで座った。

「おう?よく分からんがばっちこい!なんだ?あんま小難しいことは俺には無理だけど」

 話を始めるとわかると妙に身構える大地。

「それはだな……」

「おう……」

 お互いに緊張感が走る。言うぞ、言うぞ…?


「俺は凪が好きなんだっ!」

 とうとう言ってやった。言ってやったぞ!それなりに長い付き合いである大地でも流石に気づいてなかったのだろう、ポカーンとした表情をしている。


 すると大地が返答してきた。

「今更何を言ってるの?そんなのバレバレだよ」

「へ……」

 バレバレ?そんな馬鹿な…。


「だってフミさ、林寺さんと一緒に登校してる時と、別々に登校してる時とで全然違うし」

「全然違うとは……」

 思い当たる節がないため困惑した。


 それを俺の顔を見て読み取ったのか大地は「はぁ…」溜息をつきながらも話を続けた。


「まず第一に集中力。林寺さんのいる3組との合同授業の時はめっちゃ集中するのにさ、普段の授業ぼーっとしてるじゃん」

 ビシィッと音がなりそうなくらい大地は勢いよく腕を伸ばし俺に指を差した。


「気のせいじゃね?大体なんで俺のこと見てんだよ。授業ちゃんと聞けよ」

「どの授業も聞いていても良くわかんないから外の景色を見ようとするとちょうどフミが目に入るんだよ」

「お、そうか………」

 その景色を見ようとする時間がなければ少しは勉強出来るんじゃないかな。


「てか俺のことはいいんだよ。フミはこれからどうすんの?」

 大地は先程までの授業態度の話題を振り払うように話を変えてきた。


「どうするとは?」

「首をかしげて誤魔化ごまかすんじゃねぇってー。どうするって言われたらそりゃ告白だろ告白!」

 どうやら大地も他人ひとの恋バナが好きなタイプらしい。しかし俺は現実を伝えなくてはならない。

 俺は口を開いた。

「告白はしたよ」

「お、マジか!結果は!?」

 早く教えろとかすように手足をバタバタさせる大地。


「恋愛に興味が無いとフラれたよ」

 誤魔化すことなく事実を伝えた。隠したところで何にもならないならそのまま伝えてもいいだろうと。


「なんか……すまん………」


 ここまで深々と大地に謝られる日が来るとは思いにもしなかったが。


 すると、会話をこっそり聞いていたであろう人達が俺たちの元に寄ってきて、俺の肩をポンと叩いたと思ったら、そのまま各々お菓子を机に置いて去っていった。




 あわれんでもらうためにこの話したわけじゃないんだが………。グスン………。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る