第3話 もう1組の幼馴染

 今朝けさなぎが起こしてくれたおかげで、学校へは余裕もって到着することが出来た。


 今日は午後に部活があり、通学用とは別に部活用のバッグや道具を持っている。

 その事もあって普段よりは早く歩けない俺のペースに、凪は歩くペースを合わせてくれている。

 俺の背が大きかったらこんなことも無かったのに。


 そんなことを考えながらのんびり歩いてると、俺と凪の後ろから誰かが凄い勢いで走ってきた。


「おっすフミー!

 あ林寺はやしでらさんもおっすー」

「おっすじゃねぇよ、大地だいち

 肩壊れたらどうすんだよ」


 学校着いて早々に左肩を強く叩かれた。

 俺を苗字の「大空おおぞら」もしくは名前の「森文もりふみ」と呼ばずに、あだ名の「フミ」と呼ぶのは1人しか居ない。


 同じ野球部で同学年の小森 大地だ。


「おはよー小森くん、朝から元気だね」

「まーねー

 今日の朝練ないのがホント残念だわ」

「夕方はあるんだっけ?」

「あるよー

 フミ今日は負けねぇから!

 ボッコボコにしてやるぜ!んじゃな~!」


 俺を指差し今日も今日とてライバル宣言したと思いきや、嵐のようにアイツは走って校舎に入っていった。


「今日も小森くん相変わらずそうだね」

 苦笑いする凪。

「あいつはいつもあんなんじゃないと逆に心配になるよ」

 つられて俺も苦笑いしてしまった。


 その様子をお互いに確認して、おかしくなったからか2人してまた笑った。

 今度は苦笑いではなく微笑ましい気持ちになったからだ。


 今朝の半裸騒動から微妙な空気になってたのも吹き飛ばしてくれた。あいつと友達で良かったと心からそう思った。



 それぞれの教室の前につき俺と凪は別れた。

 俺は2組で凪は3組だ。

 凪が3組の教室へ、おはよーーと声を出しながら入っていくのを確認した後、俺も自分の教室である2組へと入った。



「わはははー!来たな、待っていたぞフミ!


 いや!我がライバルよ!!!

 さぁ今こそ決着をつけるぞ!!」


 入って早々にドアの前で仁王立ちしている自称ライバルの小森 大地に絡まれた。


「待っていたぞというか同じ組だもんな

 てかなんだよ決着って」

 大地に呆れ返りながら俺は自分の席へと向かおうとした。


「そんなもの決まっている!

 さぁ!バットを構えろ!


 俺の球を!!!打ってみろ!!!」


 そう言うと大地は後ろに隠していたであろうボールを右手に軽く握り、両手を振りかざした。

 野球のワインドアップの構えである。


「いくぞぉぉぉぉ!!!」


 荷物を置いていないのに、練習用に持ってきた自前のバットを準備出来るわけもなく素手で受け止めようと覚悟していると


「何してんのよこのバカタレっっっ!!!」

 大地がボールを投げる直前にある女子が教科書で大地の頭を思いっきり叩いた。

 パーンというとても気持ちのいい音が教室中に鳴り響いた。


「いっっっっってぇなぁ!何すんだよ桜里さくり!」


 大地の頭を思いっきり引っぱたいたのは同じクラスの松雲まつくも 桜里さくり

 いつも大地を止めてくれる、いわゆるストッパー役だ。正直めっちゃ助かってる。


「何すんだも何も教室でガチ勝負始めようとすんな!!

 この野球しかできないアホンダラ野郎!

 幼馴染だからって勝手にあんたのストッパー役になってる私の身にもなって!」

「そんなの俺知らんし!桜里が勝手にやってる事じゃねぇか!」


 最近知ったことなのだがこの2人もどうやら幼馴染のようなのだ。


「あっそ!じゃあ勝手にしたら!


 大地がどんなに困っても助けてやらないから!」

「そんなもん俺一人で解決してやらァ!」


 俺と凪とは別のタイプのようみたいだけれど。


 てか朝っぱらから喧嘩してるけど、大丈夫なのかなこれ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る