イスタニア王国軍特命遠征師団
第2話:カイロサンドリア攻防戦:導入
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──7年前。
──魔界暦528年8月。
無限の砂漠を大河が貫く土地──エジーダン地方。
その最大都市にして港湾都市──カイロサンドリアにて。
「アルベリ隊長」
「何だ。カイン」
満月の晩。
カイロサンドリアを囲う城壁の上で、人間の男が二人、街の南方を見張っているのだ。
「国に帰ったら、何したいですか?」
「さぁな……。田舎にでも帰るかな」
カインの問いに、アルベリは素っ気なく答えた。
「良いですね。……娘さん、今年で確か、8才でしたよね?」
「良く覚えてるな。肝心の娘は、俺の歳なんて覚えてないぞ」
「あと一週間で三十路ですよね。僕はちゃんと覚えてますよ」
「さらりと答えるな。……恥ずかしい」
アルベリは顔をしかめる。
「でも、羨ましい限りですね。俺なんて独身ですよ。独身! ……家に帰っても、待っているのは荒れた畑と病気の母ちゃんだけですよ」
「おいおい……。お袋さんのことは、ちゃんと大事にしてやれよ? ……そうだ。いっそのこと、帰る前に孫でも作ってやったらどうだ」
「ご冗談を! ゴブリンやオークの雌なんて抱けるわけないでしょう」
「……違ぇよ。家に帰る前って意味で言ったんだよ。……看護部隊や冒険者には、可愛い子も混ざってるんだろう? 誰が魔界で現地妻を作れと言った」
「ぇ……? ……あぁ、……そうですよねー! ……ぁはは。だいたい、この辺の魔族は全部殺しちゃいましたし……。俺の欲求不満、どんだけ溜まってんだって話ですよね……」
カインは、誤魔化すように笑った。
「全く。……」
アルベリは、無表情で息を吐いた。
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