@~*&年^<月*=日  その②

 静寂に包まれた住宅街を疾走する。所々で火の手が挙がっているのを見るに、何処も同じようなものなのだろう。家から学校までは自転車で十五分。この速度ならもうじき着く頃合いか。

 やはり、と言うべきか。学校から人の気配は感じられない。照明は確認できず、風だけがやかましく吹いている。正直、入りたくない。だが人との、それも知り合いである可能性の高い者との接触の機会を逃すわけにもいかないか。………………………これは、仕方ない。

「よし、行くか」

 一人呟き足を踏み入れ、自教室へ向かう。階段を昇り左へ曲がって奥から二つ目が目的の自教室だ。少し早足で歩いて廊下を通る。教室の前に立ち、意を決してドアに手をかけた。人がいれば話す。それ以外がそこにいれば即刻逃げる。心の中で何回か反芻はんすうした後に慎重にドアをスライドさせる。コンマ数秒で教室内を見渡し、とりあえず異常が無いのを確認すると足音を殺して中に入る。掃除ロッカーの中、机の下、カーテンの裏、天井、ベランダ。次々とクリアリングしていき、最後に教卓へと向かう。あと数歩、という所まで行ったとき、ガタン、と物音がした。発生源は教卓、その下だ。まさか。心臓が早鐘のようにリズムを刻み始める。毛穴が浮き立ち、汗が噴き出す。ドアが開いているのを再度確認し、教卓に手を伸ばす。覗き込むのは危険と判断し、ひっくり返すことにした。手に力を込める。ひっくり返すとほぼ同時にドアまで全力疾走。音を立てて倒れる教卓。

「きゃっ」

可愛らしい悲鳴と共に頭を手で覆いながら姿を見せたのは

「え?富樫?」

名前を呼ばれた相手はこちらを向くと 

「え?悠太?」




知り合いでした。

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