第3話 神力の熱注掌。

「さて、我から行くとしよう」


「来るか!?」


 俺は身構えた。


「はああああああああああああああああああああ!!」


 天周てんしゅうは両手を合わせ、さすり始めた。


 スリスリスリスリサスサスサスサスサササササアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


「マスター! ハゲがすごい早さで両手をさすり始めましたよ!?」



「あれも、師匠から教わった技―――――――――熱注掌ねっちゅうしょうッ!!!」



「なんですって!?」


 俺は身構えたまま、説明を始めた。


熱注掌ねっちゅうしょうとは、冬の寒い日、両手をさすって、友達のほっぺたに手を当てて、どや? あったかいやろ~? うわ! あったか! ってやる、あれの強化版! それがあの、熱注掌ねっちゅうしょうだッ!!!」


「なんですって!?」


 天周てんしゅうは両手をさすったまま、語り出した。


「我は師匠と貴様と別れた後、強くなるために、ひたすら神に祈り続けた。神棚に向かって、ひたすら、両手をこすり合わせて、強くなりたいです、強くなりたいです、強くなりたいです、強くなりたいです、とお願いし続けた。何日も何日も祈り続けた。そして、神は我に力を与えてくれたのだ! 頂点に立つための、圧倒的な力を与えてくれたのだ! がんばる心を認めてくれるかみガン・バールによって、我はチート能力にも匹敵する力を手に入れたッ! それがこの神力しんりょくだ! 神ガン・バールは、祈れば祈るほど、我に神力しんりょくを与えてくれるッ!!! 貴様にも分かるだろう!? この我にあふれる力をッ!!!」


「な、なんて力だ!?」


「食らえ!」


 天周てんしゅうは右手を俺に向けた。


「うわあああああ! あっちいいいいい!」


 俺と天周てんしゅうの距離は10メートルぐらい離れているのに、


 天周てんしゅうに右手を向けられただけで、


 すごいあつい!


 まるで、ストーブを押し当てられたみたいだ!!!


「どうだ!?」


「あついいいいいいい!!!」


 たまらず、俺は横に避ける。


「無駄だ!」


 だが、天周てんしゅうは、避けた俺に右手を向ける。


「あっつううううういいいいいい!」


 俺は熱いところをフーフーする。


「チッ。フーフーしたか」


 だんだん、熱が弱まって来た。


「はあ、はあ、はあ、はあ、なんて強力な熱注掌ねっちゅうしょうなんだ・・・」


神力しんりょくが下がってきたか。だが、再び祈れば、我はまた、神から力をさずかるのだ! はああああああああああああああああああああ!!!」


 サスサスサスサスサササササアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


 天周てんしゅうは再び、両手をこすり始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る