第7話 三つの朱の六芒星。

 銃をつきつけたまま、スーツ女トキワは片目を


「特別刑事法第四条、魔法で社会へ被害をこうむったことにより、あなたをここで捕獲します。また・・・」



 スーツ女トキワの開かれた片眼には、しゅ六亡星ろくぼうせいが輝いていた。



「抵抗の意思を示された場合、状況によってはこの場で殺害します」


しゅ六亡星ろくぼうせい! スーツ女トキワも変な力が使えるのか?」


「マスター、危険です。お下がりください」


 ノアが俺をかばうように、前に立つ。


「あなたたちがその犯罪者をかばうようでしたら、犯罪に加担かたんしたとみなし、同じ罰を受けていただくことになりますよ?」


些天意さてんいは誰にも迷惑かけてないだろ! 銃を向けるなんておかしいぞ!」


「まぁおれくん、誰が悪いのかっつー話はね、感情的に進めてはこじれてしまうものなのだよ」


「でも、こいつの話は唐突とうとつすぎるぞ!」


「まぁまぁまぁ、落ち着いて」


 大きな鼻息をついて、些天意さてんいは俺の横に、どーんと立った。


「コワいおねえさんに質問なんじゃが、あたしが何したのがダメだったんらい?」


「さきほど申し上げたとおり、魔法で社会へ被害をこうむったことが原因です」


 些天意さてんいは腕を組んで、うーんとうなる。


「でもあたしゃ、この力で人を傷つけたり、物壊したりしてないんだけど?」


 スーツ女トキワ朱色しゅいろの眼で、些天意さてんいを睨みつけた。


「魔法を使用する事が、すでに罪なのです!」


「コワいねえちゃんも、この力は使えんじゃん!」


「私は国から、正式に魔法を使用する許可をいただいています!」


「んな横暴おうぼうな! だったら、あたしにどうしろってのよ!」


 スーツ女トキワは銃を些天意の顔にロックした。


「抵抗せず、速やかに捕獲されなさい」


「頭あほぷーか! 力使うだけで罪っつー理屈で納得できるか!」


 顔を真っ赤にして、些天意さてんいは腕をまくって、前に進んでいく。


 俺は些天意さてんいの肩をつかんで、動きを止めた。


「ナニさ!?」


「感情的になるな!」


「なってーないわああああああああああああああああああああああ!」


「なってるだろ!」


 大きく息を吸い、吐きだした些天意さてんいは、肩に置いた俺の手をやさしく払いのけた。


「あたし、この力で悪さなんてしてないからさ。話し合えばちゃっちゃっと解決できるもんだと思ってたんだけど、な~んかムリっぽいよねえ~」


 首をコキコキ鳴らして、些天意さてんいはニンマリと笑った。


「・・・おい、些天意さてんい、まさかやる気か?」


「へっちゃらだよ、おれくん。この子とやり合ってもあたしはケガしないと思うし、ケガもさせないと思う」


 些天意は腕を組んで、スーツ女トキワを見る。


「片眼だけのしゅ六亡星ろくぼうせいが、このあたしをなんとかするなんて不可能よ」


「状況によっては殺害すると、事前に忠告ちゅうこくはしましたよ」


「捕獲でも殺害でも、やれるものならやってみなさい」



 不敵に笑って、些天意さてんい



「・・・やれるならね」


「・・・・・・」


 スーツ女トキワの頬を汗が伝った。


「あなたとあたしの力の差、教えてあげるわ」


 些天意さてんいの開かれた双眸そうぼうしゅ六亡星ろくぼうせいが輝く。

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