おとし者-3

 夕焼けに染まった空を、今以上に恐ろしく思ったことなどない。

 街の喧騒は立ち消え、帰路につく人影は一つも見当たらず。建ち並ぶ住宅街からは夕食を囲む音も、蝋燭が灯る気配もない。

 全てを静寂が包んでいる。

 建物から大きく伸びた影は小通りを満たし、夜の気配が色濃くなり始めた。

 

 ユラシャはその中で一人立ち、真っ直ぐに前だけを見据える。

 彼女が今いる場所は、この異界に迷い込んだ始まりの場所でもある細道の前だ。定食屋へ繋がる、あの細道。


 転んだ時に付いた擦り傷がしくしくと痛み、ユラシャは膝と手首に熱を感じた。影の中では暗闇に気を取られて自分が怪我をしていたことにも気が付かず、指摘されてからようやく痛みを感じ始めたことを思い出す。

 傷の手当ては手首の擦り傷だけを簡単に。膝の方はいざという時、布で覆ってしまうと動かしにくいような気がして断った。血が滲むそこは、後で家に無事帰ってからすれば良い。


 そう言うと、あの男は影に浸かりながら「頼もしいぜ。」と、へらっとした笑みを浮かべていた。


 ふぅ…、と吐いた息が少し震えた。

 怖くなかったわけではない。刻まれた恐怖は簡単に消えはしない。


 でも、ここまできたら信じるしかない。準備はできた。

 だから、胸いっぱいに空気を吸い込む。


「ッこっちだー!来ーい!!」


 小通り全体に響き渡る少女の声。しじまを打ち破るその音は、容易く異界の主の下へと届いたようだ。

 一つ目の化け物が細道の一つから姿を現す。


「、ひッ…!」


 ユラシャの喉から怯えが漏れ出た。足が一歩後ろに下がる。

 彼女の姿を視界に捉えるや否や、化け物は脇目も振らず一直線にユラシャの方へ向かってきた。


 獲物が逃げ隠れたことが相当腹に据えかねたのだろう。胸元に埋まった縦長の眼球は、酷く血走りながらユラシャのことを睨みつけた。

 四本から五本にまで増えた歪な腕を振り乱し、その全てに煉瓦を握りしめてユラシャ目掛けて迫ってくる。


 ユラシャはそれでも、化け物に背中を向けなかった。

 ぎりぎりまで逃げず、動かず。耐えて、





 鉢植えを手に取った。


 液体が飛び散る。



「ナイス!落とせズマ!」


 そんな声が聞こえるとともに、ユラシャの足下が波打って地面が無くなる。

 引き摺り込まれるようにして影沼へと落ちていくユラシャの視界には、全ての煉瓦を手放して胸元の目を押さえる化け物と、あの『粗末者』の姿があった。


 ここでネタバラシをすると、化け物を迎え撃つために鉢植えにはテキトの果汁を入れてあった。ひび割れた鉢植えでも置き方を工夫すれば、果汁を溜めておくことは容易かった。


 元よりユラシャは、この異界に持ち込んでいたテキトを切り出しナイフと一緒に自分のポケットの中にしまっていた。ポケットはぎゅうぎゅうになりはしたが、ずっと手に実を持ったままだと邪魔だったからだ。

 そしてユラシャは、ここでテキトの実をようやく有効活用することができたのだ。


 あの一つ目の化け物は目玉が大きかったため、狙いをつけやすくてとても助かった。

 もし当たらなくても、ユラシャはずっと姿を現さないズマという人物に助けられる段取りになっていたが、この果汁が当たるに越したことはない。

 なにせテキトの果汁は酸味が強く、一滴跳ねるだけでも目に酷く沁みるような劇物なのだ。あれだけの量を食らえばさぞ悶え苦しんだことだろう。

 ざまぁみやがれ。ユラシャはほくそ笑んだ。


 そうしてユラシャは頭まで影に浸かると、あとは影の向こう側の声だけがぼんやりと聞こえた。




「よく叫ぶなぁ。良かったな、悲鳴大好きっつってたもんなー。」


「でも俺は嫌いだからさ。」


「さっさとうるせえ口閉じろ!」



 ユラシャの耳に化け物の声は届かなかった。最初から、最期まで。



 そして、静寂が打ち破られる。

 街のさざめきが戻ってきた。いや。街でなく、ユラシャ達が異界から戻ってきたのだ。

 上を仰げば住処へと帰る鳥の群れが夕焼け空を横切り、煙突からは煙が立ち上っている。小通りには牛を連れた人がユラシャを不思議そうに見ながら道を進んでいった。


 瞬きのうちに影沼の外へぬるっと出されていたユラシャは、いつの間にかあの細道の前の地べたに座り込んでいた。


 案外、あっさり終わるものなんだな。

 そんなことを考えながら、しばらくユラシャがぼうっと小通りを眺めているとその隣に、ともに異界から脱出したあの青年…『粗末者』がしゃがみ込む。


「さっきさー、ユラシャちゃんがあれを提案してくれたから楽に倒せたよ。まじありがとね。」


 茶髪の青年は視線を合わせるようにして、にこにこと笑った。

 この『粗末者』が言う提案というのはテキトの果汁を化け物に浴びせかけたあれのことだ。あれはユラシャ自らが申し出た策だった。


「別に…丁度持ってたからたまたま出来ただけで。私自身、やられっぱなしは気に食わなかったし」

「いやいやいや、それにしたってよく思いついたよね。」


 立てる?と手を差し出されたユラシャだったが、ユラシャは気付かなかったふりをして、その手を借りずに自力で立ち上がった。ぱっぱと服についた砂を払う。

 『粗末者』は行き場のなくなった手を一瞬見つめ、その手を引っ込めながら自分も立ち上がった。


「ユラシャちゃんの機転のおかげで想定してたより早く済んでまじ助かったんだよ。そうじゃなきゃ俺ら夜まで粘る羽目になってたな。あんまり遅いとユージー達に要らない心配させちゃうし、やっぱ何事も早く終わった方が良いよね。」

「…夜まで待ってたら、あのまま勝ててたの?」


 ユラシャが訊ねると、彼は「勝算はかなりあったよー。」と朗らかに答えた。なにせ、と言葉が続けられる。


「夜は俺たちの味方だから。」


 そう言って青年は自分の足元に視線を向けた。つられて見れば、『粗末者』の影は穏やかな波紋を作っており、まるで彼が黒い水溜まりの上に立っているかのようだった。

 普通ではあり得ないその光景にユラシャは目を奪われる。あれは異界だけでの芸当ではなかったのだ。


「さてと。んなことより、」


 流れを断ち切るように『粗末者』が口を開く。


「異界から出れたんだから早くご家族のところに帰ろっか。みんなユラシャちゃんのこと心配して気を揉みまくってると思うから。」


 ただ、俺が話を聞いた時も家族総出でユラシャちゃんのこと探し回ってたしな。なんとか押し留めたけど、大人しく店で待っててくれてんのかなー?

 青年はそんなことを呟きながら首を捻り、「店のある場所って、確かこの小通りの先の十字路を右に行けば着いたっけ?」とユラシャに訊ねた。

 それに彼女は一瞬答えに詰まり、そして、唾を飲み込んでから言葉を紡ぐ。


「それでも行けるけど…、もっと良い近道があるの」


 指出す先はすぐ目の前。定食屋に直通するあの細道だ。

 ただでさえ日当たりの悪い細道は、今は陽が暮れているため昼間より余計に暗くなっている。


「へー、こんなとこ通れたんだ。土地勘ある子は違うなー。」

「……」

「足元暗めだね。」

「……」

「…怖い?」


 怖くないわけがなかった。幼い頃から使い慣れたこの道が、先程までは全く別の代物に変わっていたのだから。

 異界から出られたとはいえ、本当に元の道に戻っているのか。本当に、定食屋に繋がっているのだろうか。もしやまた小通りを延々と廻る羽目になるのではないか。

 そんな猜疑がユラシャの中で沸き起こり、細道に入るのを躊躇させた。


「…今は怖い。けど、通りたい」


 けれどこの先ずっと、この細道に怯え続けたくないとユラシャは思った。

 あの一つ目の化け物による恐怖をずっと引き摺るようでは、なんだか負けなような気がしたから。

 この恐怖を乗り越えてやることこそが、ユラシャなりの化け物の倒し方だと思ったのだ。


「なるほどね。」


 ユラシャのそんな想いを『粗末者』は察したようだった。


「じゃあ俺と手でも繋いで入ってみる?二人だったら怖さ半減するっしょ。」

「それは嫌」

「そ、そか…、」

「あっ…。その、あの、道が狭くなるから断っただけだから。おにいさんのこと一才合切無理ってわけじゃないよ」

「うん、分かってる。分かってるから。」


 つい即答してしまった。

 その後の言い訳がだいぶ苦しくなってしまったことを恥じつつも、どうすれば最初の一歩を踏み出せるだろうとユラシャが考えあぐねていたところ、少し心に傷を負った『粗末者』が次なる案を口にする。


「んー…。そしたら、こいつならどう?」


 その言葉とともに彼の影が揺らめいた。そして水から顔を出すようにして、影沼から獣の姿をしたナニカが現れる。

 真っ黒なそれは軽く口を開き、鳴くような素振りを見せた。


「『撫でてもいい』っつってるよ。」


 ユラシャはその獣をまじまじと見つめた。

 全てが影でできたようなそれは犬か狼のような姿をしており、顔はのっぺりとした黒さによって目の境目さえも分からない。山犬ほどの大きさで、お座りをしているのかと思いきや、胸から下は未だ影沼の中に浸かっていた。

 明らかな異形だというのに、不思議と恐怖は感じなかった。


「………ズマさん?」


 同意を示すようにこくり、と頷かれた。その仕草は少し人間臭くてどこか面白い。

 ユラシャがゆっくり手を伸ばすと、それに合わせるようにズマの頭が下げられる。立てられた耳が伏せる様は人慣れした普通の犬のようだった。


 けれど、ズマに触れる感覚はかなり形容し難いものだった。掌でズマを撫でているのは確かだというのに、毛並みが一切分からないのである。少し逆撫でしても、指先を毛の隙間に通しても視覚的にはできているのに毛に触れている感覚だけがない。

 体温は影沼の中にいる時のようにぬるい感じが伝わってくる。

 

 奇妙な感覚だが嫌いにはなれなくてユラシャがそのまま触り続けていると、ズマは影を泳ぐようにして彼女に近づき、脚に擦り寄ってきた。ぐいぐいと軽く押されるその勢いに、影沼の中で自分の涙を拭ったのはズマだったのだとユラシャは気が付いた。

 ズマがユラシャを見上げるようにして首を傾げる。その仕草は、これならどう?とユラシャに問いかけているように見えた。

 彼女の口元に笑みが溢れる。


「…うん、ズマさんがいいな。ズマさんがいれば怖くない」


 ユラシャはズマに付き添われながら細道の前に立った。

 すると今度はすんなり細道の中を進むことができ、あと三歩で店の敷地に入れる位置まで来た。ユラシャの足が止まる。


 定食屋に明かりが灯っているのが見えた。

 本当なら、とっくに店を閉めている時間帯なのに。


 そんな考えがユラシャの脳裏に過ぎる中、店の中からは荒々しい声が聞こえてきた。一番はっきりと聞き取れたのは父の声だ。


「…ぅ辛抱ならん!俺は出るぞ!」

「待てって親父、ここで待ってろって言われただろ!」

「知らん!退治屋といえど若造の腕なんか当てにできるかぁ!」

「そもそもあいつ退治屋じゃねぇんだって!」

「なおのこと信用ならん!!」


 静止の声を振り切って父が戸から飛び出してくるのが見えた。それを追って兄も母も定食屋の外に出てきている。


「ユラシャは店の裏に回ったのが最後だったんだ、きっとこっちに…、」


 父と目が合った。大きく目が見開かれる。

 後から追いついた兄たちがこちらに気付いて声を上げた。


「ユラシャ!!」

「嗚呼、ユラシャ…!、やだっ怪我してるじゃないの!」


「お父さん…、お母さん、お兄ちゃん…」


 こんなにも声を荒ける母は久しぶりだった。こんな姿を見るのは何年振りだろう。ああ、母の頬に泣いた跡がある。

 ユラシャの足は自然と前へ踏み出していた。


 一歩、二歩。三歩。


「ただいまっ…!!」


 ユラシャは家族に抱きついた。やっと、やっと帰ってこられたんだ!

 家族たちは強く、ユラシャのことを抱きしめ返してくれた。


「本当にッ、本当にありがとなッ…!」

「いーよ、いーよ。」


 ユラシャが再会できた歓びを両親と分かち合っている間に、『粗末者』は兄のユージーと一言二言交わして、いつの間にか姿を消していた。





 後日。『粗末者』は普段通りの様子でぬるっと〈定食屋テキト〉を訪れた。

 日中堂々、当然のようにズマを連れたその姿はこんなにも奇妙に映るのに、普通の人にはズマを視界に捉えることができないらしい。

 ユラシャの視線をよそに、ズマはのんびりと影に浸かりながら泳いでいる。犬掻きでもしているみたいだ。


「なら、私にはなんで見えるの?」

「うーん…影沼の中に入ったからじゃねーかな。」


 ユラシャの疑問に『粗末者』は頬を掻きながら答えた。ユラシャは空になったコップにおかわりを注いで渡してやる。


「元来、人外ってのは俺たちのすぐ近くにもいるもんなんだ。けど、大体の人はそれに気付けねーの。を知らないから。

 そんで、異界っていうのは人間と人外の境目が薄れる空間だからー、それに伴って普通よりも人外が認識しやすくなる場所でもあるんだよね。ユラシャちゃんの場合は、異界に連れ込まれた時に一つ目のいじめっ子と、ズマの見方を知った。

 だから今もズマのことを認識できてるんじゃない?……多分だけど。」

「ふーん…」


 結局多分なんだ、とは口には出さなかった。

 そして腕を組んだユラシャは、しばらく彼の言葉を咀嚼して「…ん?」と首を傾げる。


「だったら、私がズマさんの声を聞けないのはおかしくない?認識しやすくなるんでしょ?」

「それに関しては、のとのじゃ別物だから。声を聞く、つまり人外の意志を汲み取ることに関してだけは才能がものを言うんだよ。」

「へぇ、そうなんだ…」

「そもそもズマは無口な方だからねー。俺以外のやつに対しては基本ボディランゲージ…身振り手振りでしか示さないよ。」


 そう言って『粗末者』はテキトーな飲み物に口をつけた。

 ということであれば、自分はこの先もズマの鳴き声を聞くことはできないのか。ユラシャはそれをとても残念に思った。


「や、それよりも!ずっと気になってたことあるんだけど『そまつもん』って何!?」

「あ」

「ユラシャちゃん作戦準備してる時、俺の顔見た途端そう言ってたよね?

 あの後から急にユラシャちゃん余所余所しくなるし、聞いてから言葉がまじで耳にこびり着いちゃって頭から離れねーんだわ。俺ユラシャちゃんに粗末なモン見せた覚えはないし。…やべ、これ下ネタじゃないからね。」


 その言葉にユラシャはばつの悪い顔をした。

 助けてもらった身でありながら態度が悪かったのは自覚している。素直に言うべきだろうか。


「…………、その…」

「うん、遠慮なく言ってくれ。このままだと、気がかりすぎて出発できそうにないし。」

「…、……。……おにいさん、うちの店の料理捨ててるよね」

「おっと。」


 心当たりのある顔だった。


「しかもうちのお母さんに隠れてこそこそと…。それが私はちょっと…だいぶ、気に食わなくて。食べ物を粗末にしてたから『粗末者』って、おにいさんのこと勝手にそう呼んでたの」

「あ、あれはズマに分けてただけで、べつに捨ててるわけじゃなかったんだけど…。」


 彼は目に見えて狼狽えた。視線が泳いでいる。


「お母さんからは隠して、でも私の前ではやっていたのはなんでなの?」

「傍から見たとき行儀悪いのは分かってたから女将さんには見られたくなくて…最悪出禁になるかもだし…。穏便に済ませたかったっていうか…、その、バレなきゃ良いかなーって思ってしまいまして…。」

「私の前ではやっていたのはなんで?」

「────………。」

「正直に教えて欲しいな。私、ただ本当のこと知りたいだけなんだ」

「ッ……、」


 青年は異界にいた時よりもよっぽど追い詰められた反応をしていた。

 目を瞑り、頭の中で言葉を選んでいるのだろう。


「あんまり遅いとお母さん戻ってくるけどいいの?」


 彼は素直に白状した。


「ふーん」

「私なら言わないだろうって?」

「へぇー、顔が気弱そうに見えたから。へぇー…」

「私のこと舐めてたんだ」


 ユラシャが溜息を吐くと、彼の肩が大きくびくついた。


「いいよ。事情も分かったし、化け物から助けてもらったから。私の命の、恩人だもんね。だから家族には言わないといであげるね」

「ありがとうございます…ッ!」

「次からズマさんの分は私が取り分けておくから、もうこういうことはしないでね?」

「はいッ、二度としません!すませんっしたァ!」


 青年は十四歳の少女に深々と頭を下げた。

 これではどっちが助けられたのか分かりやしない。ユラシャを化け物から救い出した見事な活躍っぷりも形無しだ。


「おーい、できたから持ってけー」

「はいよー」


 兄に呼ばれたユラシャは厨房に向かい、注文の品を少し小皿に取り分けてから席へ運んだ。

 今日の日替わりは山菜たっぷりのリゾットだ。刻んだ鶏の軟骨も入っているから一風変わった食感になって美味しいはず。


「美味っ。」

「ふふん、でしょ?」


 頑張って山菜を採ってきた甲斐があった。机の下を見れば、ズマも美味しそうに皿に鼻先を突っ込んでいる。皿を用意して良かった。やっぱりこっちの方がいい。

 食べ終えた彼はユラシャの母によって会計を済ませると、ユラシャが他の客の接客をしている間に定食屋の外に出てしまっていた。


 彼らはまた、次の地を目指して旅をするのだろう。


「…おにいさん!」


 それを追って、ユラシャは彼のことを呼び止める。

 振り返った背中が太陽の光に照らされ、ユラシャの方へ真っ直ぐ伸びたその影は上半身が犬、下半身が魚という奇怪な形をしていたが、それでも恐怖は微塵も感じなかった。


「私のこと、助けてくれてありがとう!改めて名前を聞いてもいい?」


 彼は目を丸くしてから、ニッと笑って手を振った。


「俺は〈怪書の手〉のナハタ!」


 風に吹かれて彼の外套が大きく旗めく。それとともに魚の尾をした影が大きく揺れた。



「今後ともよろしく!」


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