番外編その18 2人の距離 〜愛夏視点〜

 ついに恐れていたことが起こった。

 鳴が窪田先輩と付き合い始めたのだ。

 鳴に直接聞いたわけじゃないけど、学園中その噂で持ちきりだった。

 

 ……ショックだった。

 本当は学校にも来たくなかった。

 でも、私が落ち込む姿を鳴に見せると、こんな辛い想いをしてまでついた嘘が無駄になるかもしれない。

 私を支えていたのはそんな想いだった。

 

 鳴がギターを再開して、前に歩きだす。

 私の目論見通り鳴はギターを再開し、前に歩きだした。

 でもこの結果は、私が思い描いていた未来ではなかった。

 もちろん、こういう結果になることも当然覚悟はしていた。

 でも、実際にそうなってしまうと本当に辛いものがある。


 鳴が……本当に私の鳴じゃなくなる。


 ***


 ある日、鳴が窪田先輩と付き合った今、もう我慢する必要もないだろうと思って、私は鳴に会いにいった。


 でも鳴は居なかった。

 窪田先輩とデートでもしているのだろうか。

 でも、少し待っていると鳴は帰ってきた。


「愛夏……どうしたの? まさか僕を?」

「うん、鳴を待ってたの」

「待ってたのってなんで……僕たちもう別れただろ……」

 鳴の口からその言葉を聞くと辛い現実が突きつけられる。


「うん、そうね」

「だったら何の用なんだ?」


 こんなにきつい口調になった鳴を見るのははじめて……これも私が招いた結果だと思うと、胸が締め付けられて苦しくなった。


「彼女ができた幼馴染を祝福に来たらだめなのかしら?」

「ダメに決まってるだろ……だいたい愛夏のことを忘れるのに、僕がどれだけ苦労したと思ってるんだよ」


 ダメだ、もう取り繕えない。あんなにも優しかった鳴に、こんな事を言わせてるだなんて……。


「そっか……鳴はもう忘れられたんだね……私はまだ忘れられないよ」


 ダメ……今、本当の事をいうのはダメ。


「え……」

 

 私の異変に鳴は反応したけど、


「うまくいっていないのか?」

 私の本当の想いにまでは気づかなかった。


「じゃぁ、私いくね」

「待てよ……何か用があったんじゃないのか?」

「うん、もう大丈夫。鳴の顔が見たかったの」

「じゃあね」

「ちょっ……愛夏」


 完全に失敗だった。

 この日を境に私は鳴と距離をとるようになった。


 ————————


 【あとがき】


 ままならないのが人生ですよね。こうやって大人にって割り切れるほど、心は簡単ではないですよね。


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 よろしくお願いいたします。

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