番外編その16 愛夏の憂鬱 〜愛夏視点〜
鳴と別れてから私は、憂鬱な日々を過ごしている。
めちゃくちゃ悩んで……決断したのに、毎日、胸が締め付けられるように苦しい。
4月になって、新しい環境になれば何か変わる。
何の根拠も無いけど、そう信じていた。
でも、結局、何も変わらなかった。
よりにもよって、鳴と同じクラス。
気まずい……普通に気まずい。
同じ高校へ進学したのだから、その可能性も考えてたけど、まさかだよ。
運命の神様は、私に厳しいみたいだ。
「おっ! 鳴、愛夏……また同じだな、よろしくな!」
事情を知ってるくせに、私たちに接点を作ろうとするユッキー。
ぶっ飛ばしてやろうかと思った。
——鳴は毎日塞いでいた。
中学の頃のように、学校を休まないだけマシだけど、そんな鳴を見ているのは正直、辛かった。
フった私が言うな! って声が聞こえてきそうだけど、私にとって鳴が一番であることに変わりはない。
——そんなある日、ユッキーと帰る時間が一緒になり、ユッキーと帰ることになった。
「なあ愛夏、今更だけどお前ら、なんで別れなきゃならなかったんだ?」
「え……それ聞く? 前に話さなかったっけ?」
「うん、もちろん聞いたけどさ、どうにも腑に落ちなくてな」
ユッキーの立場からしたらそうかもしれない、でも……。
「依存だとか、そんなのは俺にはよくわかんねーけどな、鳴が愛夏に頼りっきで、甘えていたのは確かだし、俺もあいつにギターやって欲しいと思ってるよ」
「だったら何が腑に落ちないの?」
「いや……二人とも辛そうだろ?」
辛い……辛いよ、でも。
「でも、あのままじゃ何も変わらないじゃない、私は3年待ったよ?」
「それは、分かるんだけどな……」
「だからそう言う事なんだよ」
ユッキーはまだ腑に落ちない様子だった。
「なあ、本当に別れないとダメだったのか? 一緒にいて、ケンカして、ぶつかるのじゃダメだったのか? 鳴はそんなに馬鹿じゃないぞ?」
……私だって本当は、そうしたかった。
「分かってるわよ! そんな事! 私もそうしたかったよ! 何度も何度も本気で話したし、ケンカするつもりで、鳴にぶつかったわよ!」
思わず声を荒げてしまった。
「あ……愛夏」
「でも、ダメなの……ケンカにならないの」
「それって、どう言う?」
「鳴は何も言い返さないの……あの頃みたいに
ユッキーは何も言い返さなかった。
「悪い、愛夏、事情も知らないで、嫌な事言っちまったな」
「私こそごめん……大きな声出して」
「何とかなって欲しいな、あいつに」
「……うん」
それでも……それでも私は、もっと本気でぶつかるべきだったんだと思う。
でも、私は怖かった。
鳴が何処か遠くへ行ってしまいそうで……。
————————
【あとがき】
愛夏の番外編では本編の背後での、愛夏の心情を綴っていきます。
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よろしくお願いいたします。
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