番外編その9 ユッキーの告白 〜ユッキー視点〜

 ある放課後の出来事だった。


「ねえ幸村、絶叫マシンってどれぐらい絶叫するんだろう?」


 なんだこの唐突なフリ……石井先輩もしかして遊園地行きたいのか?


「じゃぁ、行ってみますか遊園地?」


「うん、行く! 今度の土曜日ね!」


 え……即答……しかも日程も決められただと。


「どうしたの? 都合悪いの?」


 俺が戸惑っていると、不思議そうに石井部長が伺いを立ててきた。当然行くよね? と言わんばかりに。


「うん?」


 石井部長の笑顔のプレッシャーが凄い。


 まあでも、俺の答えは決まってる。


「もちろん行きますよ!」


「うん、楽しみにしてるね!」


 今日も石井部長の笑顔は素敵だった。


 つーか、これって……デートだよな。



 

 ……デート。


 そう考えたらとても緊張してきた。


 ……どうしよう。





 ——悩んだ挙句、俺は鳴を誘った。鳴は快く引き受けてくれた。


 普段は頼りないあいつが、とても頼もしく見えた。


 というより……自分がこんなにチキンだとは知らなかった。


 案外自分のことなんて分からないものだ。


 もしかして、自分探しの旅に出る人は、こんな些細な事がきっかけなんだろうか。


 まあ、俺のはそんな大層な物じゃない。


 勇気をだせ……俺!

 



 ——そして迎えたデート当日。


 はじめて見る石井部長の私服は、彼女のキレイ系の容姿と相まって、とても大人っぽく見えた。


 早速石井部長と鳴が、絶叫マシンの話題で盛り上がっていた。


 心なしか窪田先輩の顔色が悪い気がする。もしかして彼女、絶叫系が苦手なのかも知れないな。後で鳴に教えておこう。





 ——なんて思っていたけど息つく間もなく俺たちは絶叫系に乗りまくった。


 窪田先輩も案外平気そうで一安心だ。




 ……つーか、楽しい。


 こんなに胸が踊るのっていつ以来だろう。


 この時が永遠に続いて欲しい。




 ……なんて思っていたけど、楽しい時間が過ぎるのは早い。


 もう、夕暮れ時だ。


「最後あれ乗ろうよ」


 石井部長が指さしたのは観覧車だった。


 鳴には悪いけど、出来れば石井部長と2人っきりで乗りたい……。


「いいですね! でも僕、衣織と2人で乗ってイチャラブしたいです!」


 な……ナイスアシストだ、鳴!


「じゃぁ、私も幸村とイチャラブで乗るね!」


 え……イチャラブって……。


 石井部長とイチャラブ。


 きっと、冗談だよな。




 ……なんて思っていたけど、対面した座った俺の隣に石井部長が移動して来た。


「こら幸村、イチャラブするって言ったじゃないか」


 眉を上げて俺を見つめる石井部長……怒り顔も可愛い。


 いや、そんな場合じゃない!


 イチャラブってどう言う事だってばよ!


「石井部長、俺……」


 石井部長は俺の唇に人差し指を当てて言葉を遮った。


美弥みやだよ……ここで相応しい呼び名はね」


 な……名前呼びしろと? しかも呼び捨て?


「ねえ幸村……君は私の事、どう思ってる?」

  

 え……。


 一瞬頭が真っ白になった。


 どう思ってる……どう思ってるって。




 もちろん好きだ。




 ……アレだな。



 親友と石井部長がチキンな俺に、お膳立てしてくれたって事か。





「俺は石井部長が好きです」





 言った……遂に言った。

 


「ダメだよ幸村」



 え……。



 ダメってどう言う事?




 もしかして俺……。




 振られちゃった?




「今教えたじゃないか、相応しい呼び名を」



 あ……。



 俺は改めて言い直した。




「俺は美弥の事が好きだ……だから付き合って欲しい」



「私もだよ」



 そして俺たちは、ここで熱い口付けを交わした。



 何というか、はじめてのキスは、胸がドキドキして頭がフワフワしてよく分からなかったが、めちゃくちゃ幸せを感じた。


「信幸……これからもよろしくね」


「こちらこそ」





 ——恋愛なんてただただ面倒なだけだと思っていた。


 人が人を好きになる。


 その感覚自体、よく分からなかった。


 でも、今は違う。




 控えめに言って恋愛は最高だ。

 


 ————————


 【あとがき】


 ユッキーの告白シーンでした!

 つーか石井部長……したたかです!


 デートの様子は本編105話から107話です。


 続編も本日20時10分頃に更新いたします。


 異世界転生のラブコメを書いてみました。

 読んでいただけると嬉しいです。


 出会いを求めて異世界転生したのは間違いだった

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054917386123


 本作が気になる。応援してやってもいいぞって方は、

 ★で称えていただけたりフォローや応援コメントを残していただけると非常に嬉しいです。


 よろしくお願いいたします。

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