番外編その5 鳴の動画考察

 その後も僕の動画は安定した評価を得た。


 テクニック系を出すとバズり、普通の演奏だと評価もそこそこ。


 SNSの趣向がかなり読めてきた。


 まあ、それは僕のフォロワーさんが殆どギタリストだってことも関係している。



 今僕が考えているのは、SNSをどう使えば『織りなす音』のプロモーションに活かせるかだ。


 まず、自分1人でできることとして『織りなす音』の曲をソロギターアレンジしたものを投稿してみた。


 そこそこの評価はつくものの、プロモーションに活かすには物足りない数値だった。


 ちょっとテクニカルにアレンジして投稿すると、普通に投稿するよりは評価がつくが、これもプロモーションには物足りない数値だった。


 今度は対照的に、感情に訴えたバラードのソロギターを投稿してみた。


 テクニカルより少し低い数値だった。




 なんとなく答えが見えてきた気がした。


 視覚で感情を揺さぶらないとバズらない。


 つまり音だけでは限界があるということだ。


 動画なんだから視覚的に入ってくる情報量の方が圧倒的に多い。


 だから当然といえば当然だ。



 SNSで『織りなす音』のプロモーションを成功させるためには、魅力的なミュージックビデオが必要だ。


 僕は出来る範囲で自撮り動画を編集してみたが、感動とは程遠い仕上がりになった。


 当然投稿するまでもなくお蔵入りだ。


 

 僕の中にある1人の人物が思い浮かんだ。


 鳥坂さんだ。


 僕は鳥坂さんをフォローしており、彼女の作品を何作も見た。


 鳥坂さんの動画の出来はどれも素晴らしく評価も高かった。


 もし鳥坂さんと『織りなす音』がコラボレーションできれば、とんでもない相乗効果を生み出すのではないかと僕は考えている。



 でも、鳥坂さんにお願いするとなると、僕は女装をすることになるだろう。


 女装……。


 正直女装に対する抵抗はなくなってきている。


 慣れというのだろうか。


 でも、女装が当たり前になりつつある自分に不安を覚える。


 無いとは思うが目覚めてしまったらどうしよう……。


 女装趣味に目覚めてしまった時のことを、本格的に衣織に相談する必要がある。


 そんなことを考えながら『織りなす音』の絵コンテを考える僕だった。



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