幼馴染にフラれた僕が何故か学園のアイドルに告白されて平穏な日々を失った

番外編その4 鳴のバズ動画

　安定して動画に評価がつくようになった。

　それに比例して沢山のコメントもいただき、交流の幅も広まった。

　アコギのソロギターの方が1番多かった。次に多いのがロックで、やはりマニアックなジャンルになってくるとプレイヤーも少なくなってくる傾向だ。

　僕みたいにフラメンコをルーツにしているギタリストは希少で、アンが得意とするマニューシュジャズは皆無と言っても差し支えなかった。

　アン……そういえばアンはSNSのアカウントを持っているのだろうか？

　アンのアカウントを検索してみると……一瞬で見つかった。

　さすが、売れっ子は違う。

　フォロワーの数も桁違いだ。

　僕はとりあえずアンをフォローしておいた。

　——安定して評価が得られるようになったものの、僕はまだバズった事がない。

　今の感じでマイペースでやっていくのも悪くないが、どうせならもっと多くの人の目に触れたい。承認欲求がどんどん大きくなる。SNSの魔力というべきだろうか。

　僕の動画はベーシックなテクニックをつかった、比較的スタンダードな演奏が中心だ。

　玄人受けはいいが、爆発力には欠ける。

　評価を受けている動画は派手なテクニックが多い。

　……正直、あまりテクニックをひけらかすのは好きじゃないけど、伸び悩んでいる状況をなんとかしたい。

　僕は今のテクニックのスタンダードをふんだんに盛り込んだ動画を一本作成した。

　ギタースラップ、スイッチスタイル、スラム、タッピング、スウィープ、速弾きなどなど、1本の動画でお腹いっぱいになってしまう内容だ。

　そして、ゴールデンタイム。

　みんなが1番動画をみているであろう時間に投稿した。

　結果から言おう。

　バズった。

　投稿後、しばらくしてから通知が鳴り止まなくなった。

　すごい、こんなに狙い通りに、行くとは思わなかった。

　リアルタイムで見ても『いいね』と『拡散』がどんどん増えていく。

　——結局この日は通知で、にっちもさっちも行かなくなったので、翌日改めて成果を確認した。

　桁違いだった。

　これを僕が……と思うと感慨深いものがあった。

　そして、フォロワーを確認すると、アンにフォローされていた。

　僕と知ってフォローしたかどうか、今度コメントで、聞いてみようと思った。