第178話 織りなす音の道

 練習後にミーティングを行うのは織りなす音の定番だけど、今日はいつもと様子が違う。


 時枝がおり入って相談があると言うのだ。


「衣織さん、そろそろ進路ですよね!」


「え、ええ、そうだけど」


 なんで時枝が衣織の進路を……。


「織りなす音……どうするんですか? 続けるんですか? 辞めるんですか?」


 あ……失念していた。僕は当然プロを目指すものだと思っていたけど、皆んなとはその辺、話し合ったことが無かったんだ。


「当然、続けるわよ」


「「おお!」」


 穂奈美が珍しく時枝と同じテンションで声をあげた。


「でも、迷ってることがあって」


 迷ってる……衣織が?


「進学ですか?」


「そうそう、進学するか」


 そうか、衣織は一つ上だから進学となると今から準備しないと間に合わないのか。





「織りなす音1本で行くか」




 織りなす音1本って……すごくリスキーな選択に感じるんだけど……。


「てことはメジャー目指すんですよね?」


「うん、メジャーを目指すわ」


「「おお!」」


「だから私も、時枝と穂奈美に相談しようと思ってたのよ」


 あれ……時枝と穂奈美……僕は?


「2人は、どうするつもりなの?」


「「もちろんメジャー目指します!」」


 お——っ! 時枝も穂奈美も!


「でも、あーしは、大学行ったほうがいいと思ってます。もちろん許される環境ならですが」


「うんうん、そのほうが結果、自由な時間が多くなる」


「そうよね……穂奈美の言うように、結果自由な時間が増えるもんね」


 ん……あれ?


 なんかさっきから僕、蚊帳の外じゃない?


 なんで2人ばっかりで……僕には聞いてくれないの?


「私もそう思ってたの、いきなり1本って言っても、バイトとかしないと活動資金もないじゃない? バイトに追われて中途半端になっちゃったら親に申し訳ないし」


「まあ、そうですよね」


「うんうん」


 その後も僕を置いて3人で話がガンガン進んで行った。


 僕メンバーだよね?


 つか軽音フェスではバンマスって言ってくれてたよね?


 そもそも……衣織の彼氏だよね?



「ありがとう、2人とも決心ついたわ」


「いえいえ」


「なんか、時枝の相談だったはずなのに、私の話ばっかりになってごめんね」


「もともと、その話の予定だったんで」


 結局置いてけぼりのまま、話しが終わってしまった。



「そう言うわけだから、よろしくね鳴」


「え……」


「『え』じゃないわよ、聞いてなかったの?」


「聞いてたけど……」


「夢叶えてくれるって約束したよね?」


「う……うん」


「私たちをメジャーに連れて行って」


「え」


「これが3つ目の私の夢よ」


「よろしく音無くん」


「よろしく師匠」



 そっか……僕は聞くまでもなく運命共同体ってやつか……。


 父さんは許してくれるだろうけど……ちゃんと母さんにも話さないと。



 あと凛も……。



「ちなみに鳴、最後の夢はメジャーになってからだからね」



 必ずメジャーになろうって言う、衣織独特のエールだ。


 


 愛夏にフラれて、衣織と出会って皆んなと出会って……本当に色々あった。



 トラブル続きではあるけど……オイシイ思いもしてるし、それはそれでいいだろう。


 衣織に愛想尽かされないかだけ気にしないとだめだけど……。




 今のシナリオは想定外だった。




 幼馴染みにフラれた僕が学園のアイドルと付き合ってメジャーデビューを目指すことになるとは夢にも思ってもみなかった。



 ————————


 【あとがき】


『幼馴染にフラれた僕が学園のアイドルと付き合ってメジャーデビューを目指す』が続編のタイトルです。


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054898103355


『織りなす音』のメジャー挑戦は新作として執筆いたします。


 本編はひとまず完結ですが、改稿を行う予定です。

 動きがある場合は続編のあとがきや、近況ノートで報告いたします。


 連載開始から約2カ月半ご愛顧のほどありがとうございました。


 また続編の方も応援よろしくお願いいたします。


 本作が気になる。応援してやってもいいぞって方は、

 ★で称えていただけたりフォローや応援コメントを残していただけると非常に嬉しいです。


 よろしくお願いいたします。



 逢坂こひる


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