第159話 学園祭の出し物

 なんでこうなった。


 学園祭のクラスの出し物が『男女逆転コンテスト』に決まった。


 『男女逆転コンテスト』とは文字通り男子が女装し、女子が男装し、その仕上がり具合を競うものだ。


 日本は多数決の国だから、出し物がそれに決まるのは仕方がないと納得している。




 でも……なんで僕が出場することに。




 ちなみに凛、ユッキー、愛夏も選ばれている。



 我が軽音部には毎年恒例の体育館ライブがある。


 毎年かなり盛り上がる人気のイベントだ。


 特に今年は『全国高校生軽音フェス』で好結果を残し注目度も高い。


 そんな1大イベントにタイムテーブルによっては女装のまま出場しなくてはならない。


 まあ、学園祭だし別に女装のままライブをするのもやぶさかではない。


 でもそうなると……。


 僕がルナだってバレてしまう。


 ずっと恐れていたことがついに現実にって感じだ。






 ——そして放課後、この件を部活で報告した。


 軽音の練習があるので、日々の準備は免除されるが、衣装合わせやリハーサルなど、どうしても部活を休まないとダメな日があるからだ。


 まあ、僕の予想通り、みんなは大爆笑だった。


「いや、つかね、もう皆んな分かってるんじゃない? 凛ちゃんとそっくりなんだし、2人同じクラスなんでしょ?」


「いや案外な、みんな気付いてないみたいだぞ」


「え? そうなの?」


「きっとそれは女子の陰謀」


『『……』』


 穂奈美の一言で色々察したのかみんな押し黙ってしまった。




 ——「ところで鳴……念には念をって言うじゃない?」


「は……はい」


 なんだろう……結衣さんの笑顔が凄く怖い。


「だから、今までのルナと感じを変えて女装すればバレないんじゃない?」


 新たなウィッグと化粧道具を取り出す結衣さん。ウィッグって結構高いよね? なんでそんなに持ってるんだろう。


「いえ……その」


 みんながジト目で僕をみている。これは断るとシラケるやつだ。


「は……はい」


 この後僕は『すっぴん』メンバーにより徹底改造された。


 確かにこの仕上がりなら僕がルナだってバレないかもしれない。


 ニューバージョンの僕の女装を見て、悔しがる時枝、ジト目で僕を見つめる穂奈美、うっとりしていた古谷先輩の眼差しが忘れられない。


 しかし……こんな僕を見て衣織はどう思っているのだろうか。


 いつも当たり前のように、温かく見守ってくれているから気にしたことがなかったけど……。


 この後、僕はそのことだけが気になって仕方なかった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る