第147話 大阪の夜
『『かんぱーい!』』
何はともあれ、祝勝会だ。高校生だから当然ソフトドリンクです。
当初は日帰りの予定だったのだけれど、僕たちの頑張りを知った寺田先生が、学校側に事前交渉してくれていたらしい。
そのお陰で今日は楽しい夜になりそうだ。
「まさか優勝と準優勝とはな! 川瀬んところも窪田のところも凄かったよ。本当におめでとう」
『『ありがとうございます』』
寺田先生は部活には出てこないが、謎に人望も人気もある。
「つーか、今年入部した1年が揃いも揃って優勝バンドとはな……来年は安泰だな古谷!」
「はい! 俺はもう卒業してますけど……」
「え……お前、今の成績で卒業できるとか思ってるわけ?」
「え、無理なんですか?」
「私の口からはなんともな……」
ざっくばらんな方だ。
祝勝会が盛り上がったのは最初の方だけだった。食事が終わった頃には皆んな、言葉数も少なく疲れ切った様子だった。
特に古谷先輩たちは、僕たちが疲れたら演奏に支障が出ると言って、機材の搬入搬出など、力仕事を一手に引き受けてくれていた。今回の結果は、僕たちだけの力だけでなく、皆んなに支えられていたからこそなのだ。
——合宿の時と違い今日は部屋割りは女部屋、男部屋で分けられていた。まあこれが普通だろう。
部屋に戻ると布団が敷いてあり先輩方は、ばったばったと寝てしまった。
寝てしまった先輩たちに悪いなと思いつつ、日課になっていた凛の課題を練習し始めると、衣織からメッセージが入った。
『ロビーにきて』とのことだった。
——僕は身支度を整えてロビーに向かった。
「ごめんね、疲れてるところ呼び出して」
「ううん、大丈夫だよ。皆んな寝てしまって、やることなくてギターの練習してたぐらいだし」
「お、おう……案外タフなのね」
「まあ、日課だし……やらないとなんか気持ち悪くって」
「そう、こっちも寺田先生以外はみんなヘトヘトよ」
「日差しもキツかったし、タフなライブだったもんね……衣織は疲れてないの?」
「疲れてないことはないけど、まだ時間も早いし、せっかく大阪に来てるんだし……」
まさかこの展開は……デートのお誘いか?
「ライトアップされた大阪城でも見に行かない? 先生に許可もらったし」
デートのお誘いではなかったが、ライトアップされたお城を見に行く……まあデートみたいなもんか!
「喜んで!」
「優勝のご褒美だって」
衣織と夜の大阪をお散歩デート……これは疲れも吹っ飛ぶご褒美だ。
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