第146話 結果発表

 ステージに運営スタッフ、審査員が集まり受賞式が始まった。


 賞が発表される度に歓喜の輪ができる。


 今日1日出場校のステージを見ていたが、いいなと思うバンドは軒並み選出されていた。


 僕は自分の感覚が世間とずれてないことに密かに喜びを覚えていた。


 そして残すは、両部門の優勝、準優勝のみだ。




 会場が静まり返り緊張が走る。




「カバー部門、準優勝はとてもキュートなステージを見せてくれた『すっぴん』だ! おめでとう!」


 おめでとうと言うべきなのだろうか、残念だったと言うべきなのだろうか。


 そんなことを考える間もなく、結衣さんたちは抱き合って大はしゃぎだ。準優勝でも立派な結果だ。嬉しいに決まっている。おめでとうございます。


 優勝は僕が睨んだ通り、カバー部門のトリを飾ったバンドだった。本当にいいステージだった。おめでとうございます。





 ——そしてオリジナル部門。





 準優勝は木村さん、朝子さんのバンドだった。


 木村さん含む、朝子さんの以外のメンバーは抱き合って喜んでいたが、朝子さんはずっと僕を睨みつけたままだった。


 準優勝は彼女にとって、悔しさでしかないようだ。






 そしてついにオリジナル部門の優勝発表の時がきた。





「オリジナル部門優勝は、圧巻のステージで未曾有の盛り上がりを見せた『織りなす音』だ! おめでとう!」


『『ワァァァァァァァァァ——ッ』』


 会場全体が盛り上がり僕たちを祝福してくれている。




 やった……ついにやった。


「鳴!」「兄貴!」「師匠!」「音無くん!」


 皆んなが抱きついてきてもみくちゃになった。嬉しい! 僕は人目もはばからず涙を流して喜んだ。


 僕たちはそのまま賞状を受け取りにステージに駆け上がった。


「代表者は誰かな?」


 当然、衣織だろうと思っていたが、皆んなに背中を押された。


『『よろしく』』


「みんな……」


 涙を拭って、賞状を受け取った。


 会場から惜しみない拍手が送られた。


 ちなみに表彰式で涙を流していたのは僕だけだった。




 ——優勝必達で臨んだ『全国高校生軽音フェス』で僕たち『織りなす音』は見事優勝という栄誉を勝ち取った。


 これまで数々のギターコンクールで優勝してきた僕だが、みんなの力で勝ち取った優勝はまた格別だ。


 ありがとうみんな。


 そしてお疲れ様。




 ようやく長い僕たちの夏が終わった。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る