第142話 全国高校生軽音フェス開幕

 朝子さんとのやりとりで朝からどっと疲れてしまったが本番はこれからだ。


「え——っマジで! 熱っ!」


 寺田先生からプログラムを手渡された結衣さんが、まあまあの勢いで驚いていた。


「どうしたの結衣?」


「衣織……トリだよ」


『『おぉぉ——っ!』』


 部員の皆んなが盛り上がるのも無理はない。トリとは出場バンドのラストを飾ることだ。


 全国大会のトリ……プレッシャーは掛かるが大変名誉なことだ。気が引き締まる思いだ。


「と、と、と、トリ……『織りなす音』が……お、お、お、お、お前ら気合い、いれ、いれ、いれろよ!」


 時枝……今から緊張してどうする。ちょっと不安になってきた。


 今年の『全国高校生軽音フェス』は前半・後半で行われ、『すっぴん』も『織りなす音』も後半のステージだ。ちなみに朝子さんのところも後半で、僕たちの直前だと結衣さんが教えてくれた。



 僕たちは出番まで、観客席で他校のライブを楽しんだ。


 全国大会に出場するだけあって、どの学校も高校生レベルとは思えない仕上がりだ。プレッシャーも感じるが、ワクワクが止まらない。


 あっという間に前半の部が終わって休憩を挟んで後半の部だ。


 プログラムによると後半のオープニングを飾るのは『すっぴん』だ。



「うぅ——なんか緊張してくる」



 流石の結衣さんも緊張している。なんか言葉をかけないと。


 僕がもじもじしていると衣織が『すっぴん』メンバーに声を掛けた。


「3人とも、合宿を思い出して。オリジナル部門・カバー部門ダブル優勝しかありえないから」


 こんなプレッシャーを感じるハッパの掛け方、僕にはできない……衣織節炸裂だ。


「「「うん!」」」


 それでも3人は気合いの入った表情になりステージに駆け出していった。




 ——結果から言うと『すっぴん』のパフォーマンスは選抜ライブ以上の出来だった。


 本選の野外を想定し、シンプルにアレンジした曲がハマった。


 野外は室内と違い反響音がほとんど期待できず、自分の音も散ってしまう。


 しかしシンプルアレンジで音圧が増した『すっぴん』には関係ない。


 息のあった振り付けと『すっぴん』の武器であるJKの可愛らしさで、終始客席を魅了した。


 ライブで普段通りのパフォーマンスを発揮するのは難しい。


 しかし『すっぴん』は普段以上の実力を発揮したと言ってもいいだろう。


 衣織の言ったダブル優勝も夢じゃない!


 そう感じるステージだった。


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