第137話 軽音フェス予選結果発表
いつもはゆるい雰囲気の軽音部だけど、今日は違う。皆んないつになく緊張の面持ちだ。
というのも本日。
『全国高校生軽音フェス』の本選出場がウェブサイトで発表されるからだ。
ウェブサイトでの発表なので、当然それぞれスマホで確認することもできる。
しかし、そこはそれ、皆んなで確認することに意義があるのだ。
皆んなが集まったところで、古谷先輩が早速ノートパソコンを開いた。
「ちょ、これは無理だって!」
皆んなで覗き込もうと押し合いへし合いになった。古谷先輩の言う通り、流石に全員では無理だ。
——気を取り直して、皆んなを代表して古谷先輩に確認してもらうことにした。
本来なら部長である結衣さんが適任なんだろうけど、緊張で無理らしい。
「えっと、まずはカバー部門からだな……」
古谷先輩がカバー部門結果発表ボタンをクリックする。
緊張の一瞬だ。
「すっぴん、すっぴんはと……」
マウスのスクロール音が響くたびに緊張が走る。
スクロールは2度3度と繰り返された。
そして遂に、スクロールが止まった。
「ん……すっぴん! あった! あったぞ川瀬! やったな!」
『『おお——っ!』』
『すっぴん』の本選出場に部室がわいた。
「へへ……ありがとう古谷先輩、嬉しいよ」
いつもはひょうひょうとしている結衣さんだが、その瞳にうっすらと涙を浮かべていた。
——興奮冷めやらぬまま、続いてオリジナル部門。
僕たちの番だ。
いつもは強気な衣織も、祈るような表情でパソコンを見つめている。
凛と穂奈美はいつもと変わらないが、時枝はずっとオロオロしている。
「オリジナル部門、いくぞ!」
オリジナル部門結果発表ボタンがクリックされた。
「ん、……織りなす音! 織りなす音あった! あったぞ!」
『『おお——っ!』』
『織りなす音』はファーストビューに掲載されていた。
順不同と記載されているが嬉しいものだ。
「鳴!」
喜びのあまり衣織が勢いよく飛びついてきた。
突然のことで、僕は衣織を受け止めることが出来ずに、そのまま転んでしまった。そして何度もラブコメで見たありえないだろうと思っていた光景を演出してしまった。
その光景は『転んだ拍子にキス』と『ラッキータッチ』である。
『『おおおおお————っ!』』
明らかに本選出場決定の時よりも部室が湧いた。
恥ずかしいより先に、皆んなに悪いことをした気分になってしまった。
ちなみに、本選出場の詳細は後日メールで送られるくるとのことだ。
『全国高校生軽音フェス』が終わると学園祭もある。
これから更に忙しくなる。
僕にはラッキースケベにかまけている暇などないのだ。
けど、本音は嬉しい。内緒です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます