第106話 ダブルデート当日
衣織はダブルデートを快く引き受けてくれた。サポートするために必要だと2人の関係を根掘り葉掘り聞かれたが、僕に答えられることは殆どなかった。
考えてみれば親友なのに、僕はあんまりユッキーのことを知らない。
ギターの時も愛夏の時も、ユッキーはずっと僕のことを励ましてくれていたのに……『どんだけ自分の事ばっかりだったんだよ』って今更ながら気付く。ありがとうユッキー、僕頑張るからね!
——そして迎えたデート当日。
ユッキーがデートの場所として選んだのは遊園地だった。選んだと言うよりも石井部長と遊園地の話題になってそのままの勢いで誘ったそうだ。
遊園地……物心ついてから来るのは初めてかもしれない。
「どうしたの鳴?」
衣織は初めてのデートの時に買ったシャツワンピにショートパンツを合わせていた。足も綺麗だ……油断するとまた煩悩に支配されそうになる。
「いや遊園地ってあんまり来た事ないから……はたから見てても乗り物とか結構迫力あるなと思って」
「私も私も」
石井部長はゆったり目のトップスにロングスカート、カジュアルにまとめているがキレイ系の容姿と相まって大人っぽく見える。そして部室でお会いした時よりも当たりが柔らかい印象だ。部室では若干ピリッてたから仕方ないのかもしれない。
「なんかそんな話題になって幸村が誘ってくれたんだよね」
「あは、そうでしたね……」
ユッキーがめちゃめちゃ緊張している。石井部長可愛いもんな……気持ちはわかるぞ親友!
——先ずは小手調べとばかりに、ノーマルのジェットコースターに乗ることにした。そんなに並んでいないし、これなら絶叫系に慣れていなくても大丈夫だろうと思った。
石井部長とユッキーは並んでる間もワクワク感が伝わってきて会話も弾んでる。とてもいい感じだ。
でも衣織は……顔面蒼白だ……あり得ないぐらいの集中力で、どこかを一点を見つめしていた。どこを見つめているのかは僕にも分からない。
「衣織大丈夫?」
「だ、だ、だ、だ、だ、だ、大丈夫……」
あきらか大丈夫じゃない……僕は不安になった。
僕たちの順番が来た。
ユッキーたちが先頭で、僕たちはユッキーたちの真後ろだ。ユッキーたちは凄く楽しそうだ。さりげなく石井先輩がユッキーにしがみついている。いい雰囲気だ。
一方僕たちは……「ぎゃぁぁぁぁぁ———っ!」衣織があり得ないぐらいの勢いで絶叫していた。
僕のシャツが破れないかというのと、衣織の喉が凄く心配になった。
「楽しかったね! 次あれいこ!」
「いいですね!」
ユッキーと石井部長はいい盛り上がりを見せている。
「大丈夫……衣織?」
「大丈夫よ……」
強がってるけど、目がどこか遠くを見ている。
この調子で衣織はもつのだろうか。
ユッキーのことも心配だが、衣織のことがもっと心配になってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます