第105話 ダブルデートの約束

 あの後も色々あった。

 

 衣織は明言は避けたが、メジャーを目指すことになるだろう。


 『織りなす音』


 グループ名を決めたことはひとつの決意表明だ。



 ——話は変わるが、アンは予想通り学さんのレコーディングに参加するために来日したらしい。


 その他にもいくつかギタークリニックの依頼を受けているようで、出来れば手伝って欲しいと頼まれたが『学校は休ませない』と父さんに一蹴された。



 ——そんなこんなでメジャーを目指すことになっても学生の本分は勉強なのだ。


「ちっす、鳴」


「おはよう、ユッキー」


 そう言えばユッキーから石井部長のことを聞き出せていなかった。ユッキーは石井部長のことが好きなのだろうか? 今までこの手の浮いた話をすることがなかったから、なんて切り出していいのか分からない。


 ユッキーって石井部長のことが好きなの? ってダイレクトに聞いていいものだろうか。


「なあ鳴、ちょっと話があるんだけど、いいか?」


 ナイスタイミングでユッキーに誘われた。教室では話しにくいらしく中庭に移動した。


「なあ鳴、頼みがあるんだけど」


 頼みって何だろう……またルナになるのはちょっと嫌だなぁ……親バレどころか、彼女の親バレまでしたし。


「今度の土曜ダブルデートしてくれないか?!」


 だ……ダブルデートですと! もしかしてユッキー、石井部長を誘ったのか?


「ダブルデートって……ユッキーのお相手は石井部長?」


「あ、ああ」


「ユッキーってやっぱ石井部長のことが好きなの?」


 ユッキーは分かりやすく狼狽えた。


「わ……分かるか?」


「うーん、ほら、石井部長が僕にハグした時、凄い勢いで睨んでたでしょ? だからそうじゃないかなって」


「ああ……あの時か」


 照れ臭そうにする親友の仕草も悪くない。


「鳴も知ってると思うけど、好きとかよくわかんなくてさ……でも気がついたら部長のこと誘ってたんだ」


 気がついたらって……なんてイケメン発言! まあ実際ユッキーは背も高くてイケメンなのだが。


「だから頼むよ! 2人きりだとどうしていいのか分からなくてさ!」


 もちろん親友の頼みだ。やぶさかではない。


「分かった、昼休みに衣織に聞いてみるよ」


「ありがとう、恩にきるぜ」


 親友の恋。


 僕にできることなら全力で手伝わせてもらいます。




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