第101話 バレた正体?

 アンに連れられてきた勝負の場所は窪田家だった。アンがリスペクトするアーティストは、まず学さんで間違いないだろう。もしかしたらアンも、学さんのレコーディングに参加しているのかもしれない。


「ここよ」


「「あ、はい」」


 アンがインターホンで呼び出すと佳織さんが出迎えてくれた。


「あれ? あなた達一緒だったの?」


「え?」


 戸惑うアン。そりゃそうだろう。勝負を挑んだ相手がリスペクトする人の娘だなんて確率は、天文学的な数字なのだから。


「アン……ここ、私ん家なの……」


「え————っ!」


 驚くアン。そりゃそうだろう。僕がアンでも驚く。


 リビングに通されて今度は僕が驚いた。


「凛!? お前、何故アンと……」


 音無 仁、僕の父さんまでここにいたのだ。


「あれ? 凛ちゃん久しぶり」


「えっ、凛!? ルナじゃないの?」


 父さんと学さんの反応に戸惑うアン。もうダメだ……隠し通せない。


 僕は衣織と顔を見合わせた。衣織も頷いている。


 自分で望んだ女装じゃないけど、これ以上アンを騙すのも心苦しい。


 僕は覚悟を決めて自分の声色でカミングアウトした。




「鳴です……すみません」


『『え!』』


「鳴……お前まさか、そんな趣味が……」


 抱えていた200万のガットギターを落として驚く父さん。


「違うよ父さん!」


「さすが双子だね、見間違えちゃったよ」


 全く動じない学さん。似た者夫婦だ。


「えっ、えっ、えっ……ナル……ナル・オトナシ?」


 理解が追いついていないアン。


 とりあえず僕は衣織の部屋を借りて着替えて来た。




 ——「すみませんでした」


 僕はとりあえず深々と頭を下げ、アンに謝罪した。悪意はなかったとは言え、騙していたことに変わりはないのだから。


「ナル・オトナシ……あなたがルナだったの?」


「はい……ごめんなさい、騙してしまって」


「なぜなの? よく分からないわ? 説明してくれる?」


「私も分からない……詳しく聞かせてくれるか?」


 父さんが、珍しく困惑気味だ。

 

 僕は女装するに至った経緯を衣織にサポートしてもらいつつ説明した。一応の理解は得られたが、明らかアンは不機嫌になった。


 ——「ということで、今回の勝負はなかったことに……」


「ナル・オトナシ、それは何の冗談?」


「え、だって僕はルナじゃなくてナル……男ですよ?」


「それに何の問題が? あの時のあなたのプレイまでがフェイクではないのでしょ?」


 それはそうなんだけど……それよりも問題ないって……僕の性別なんてどっちでもいいってこと?!


「分かったわ、勝負しましょう」


「衣織……」


 衣織は引かなかった。


 どうあってもこの勝負は避けられないようだ。


 

 ————————


 【あとがき】


 ついに正体がバレました! 次回は鳴としてスッキリ? 勝負です!


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