第83話 お見舞い
朝食のトラブルはあったものの、学校が終わったぐらいの時間から熱も下がりだした。この分だと明日は登校しても大丈夫だろうけど、凛がダメって言いそうだ。
そんなことを考えているとインターホンが鳴った。
誰だろう。宅配は頼んでいないし我が家に来客なんてまずない。もしかしたら母さんが帰ってきたけど鍵を出すのが面倒だったのだろうか。
「おじゃまします」
聞き覚えのある声だった。
「どう? 調子は?」
愛夏だった。『なんで愛夏が』って聞くのは野暮だ。クラスメイトだし、ご近所様だし、幼馴染だし、中学の時は僕の身の回りの世話もやいてくれていた。ある意味、誰よりも我が家の勝手が分かっている、超戦力だ。
だが問題は……元カノってことだ。
そして愛夏のやつは衣織に宣戦布告もしている。
もし愛夏が夕食の支度を申し出てくれても断らないとダメだ。たとえぶり返すことになったとしても。
で、さっきから愛夏の後ろで凛が悪そうな顔で笑っている。もしかして凛のやつが呼んだのかも知れない。
「起きていて大丈夫なの?」
「うん、多分もう大丈夫」
安心して寝ていられないし。
「無理しちゃだめだからね」
「ありがとう」
男の子には無理しなければならない時があるのです。
「これ、今日のノートとプリントね」
ノートまで取っていてくれたのか……。
昔を思い出すが、
「ありがとう」
でも、お礼はちゃんと言わないとダメだ。
「鳴、ちゃんと勉強してる?」
痛いところを……。
「ま……まあ、ぼちぼちだよ」
実は僕はあまり勉強ができない。幼い頃からよく海外に行っていた影響で語学に関してはそこそこできるのだが、その他が壊滅的だ。
「あんまり根を詰めちゃダメだよ」
根を詰めてはいたが衣織とアレをするための勉強だ。なぜか少し心が痛んだ。
「うん、大丈夫」
何が大丈夫なんだ。
「夕食の支度するから、鳴は寝ててよ」
来た……そして凛がもの凄く悪い顔で笑っている。あいつ確信犯だ。あいつが夕飯の支度を頼んだまである。
「流石にそれは悪いよ、愛夏。もうかなり良くなったし」
「でも凛に頼まれたんだけどね」
……くそ、凛のやつ……あとでコテンパンにお仕置きしてやるからな! と粋がっても返り討ちにあうのは明白だ。
僕がしどろもどろしていると、またインターホンが鳴った。
凛のやつもしかして……。
僕はとてつもなく嫌な予感がした。
そしてその予感は現実のものに……。
凛め……僕に何の恨みが!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます