第69話 受けて立ってやろうじゃないか
翌日、学校は休みだったが、衣織と会えることになった。もちろん愛夏のことを話すためだ。休みの日に衣織と会うのは例のデートの日以来で、今日は衣織の家に尋ねることになっている。
僕は衣織の言いつけ通り、ちゃんと衣織の元へ帰ってきた。
愛夏の気持ちに応えられないことも、ちゃんと伝えた。
宣戦布告はそれとは別に発動されたのだが……。
僕的には『続きしたいし』を期待してもいいのでは? と密かに思っている。
まあ、そんな僕の下心は置いといて、報告をまってるであろう衣織の元へ急いだ。
呼び鈴を押すと衣織が出迎えてくれた。今日は学さんと佳織さんは旧知の音楽仲間を迎えに行っているとのことで、しばらくは衣織と2人きりだ。これはチャンスなのでは!? と心を踊らせる僕は俗物すぎる。
衣織の部屋に案内され人心地ついたところで、昨日の出来事を話した。
——「なるほどね……気持ちは分かるけど随分身勝手ね」
「うん……でも、どん底だった僕を支えていてくれたのも事実だから、僕は愛夏を責める気になれなくて」
「へー」
ジト目で見られた。
まずいことを言ったのかもしれないが、隠し事はしたくない。いずれ僕がギターを置いた理由も衣織には知ってほしい。となると愛夏の話は避けて通れない。
「でも、僕の気持ちは変わらない。僕は衣織だけを見てるよ」
僕の言葉に衣織は満足そうに微笑み返してくれた。
「よく出来ました。ご褒美よ」
「んぐっ!?」
不意打ちで重なる唇と唇。ファーストキスと同じく濃厚なやつだった。
衣織と2回目のキス……。
まだ自分から出来ていないところに情けなさを感じる。
そして僕はなぜか目を閉じてしまった。乙女か!?
——キスの余韻も冷めやらぬ中、衣織は続けた。
「それはそれとして『宣戦布告』ってなんかムシャクシャするわね! なめてんのかしら」
衣織がいつになくヒートアップしている。
「ま……まあ」
「結果は見えてるけど……つか結果は出てるけど、受けて立ってやろうじゃないか! 愛夏さんに伝えておいてね」
「う……うん」
同じ学校なんだし2人とも自分で伝えればいいのに……と思った。でも、それをすると更に僕に飛び火がくる。実は僕を気遣ってのことかもしれないと思った。
「まあでも……感情に蓋をしなかったことは評価してあげるわ」
なんとも衣織らしい答えだった。
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