第66話 信じてる
昨日の悶々は衣織とのキスで一旦は落ち着いていたのだが、今日は今日でまた別の理由で悶々としている。
寝る前に衣織とのキスを思い出してしまったからだ。興奮してしまって連夜の寝不足だ。
まあ眠れなくなった理由はそれだけではない。
『今日はこれで我慢してね』ってことは続きがあるってことだ。思い出すだけで色々と爆発しそうだ。
なんか衣織と話しているだけで妙にソワソワしてしまう。期待してしまう。思春期のメンズ達はこんな時どうしているのだろうか。
衣織をそういう対象としてしか見ていないわけではないのだけれど、そういう対象として見ていることも確かなのだ。
この状態を情緒不安定というのだろうか。
衣織のためにも早く安定したい。
「衣織、今日、衣織の家に行ってもいい?」
「いいけど……突然ね?」
「実は……」
衣織に愛夏が家に来ることを話した。1番の理由は『衣織とイチャラブしたい』なのだけど、昨日の今日なので、これ見よがしな気がして、愛夏が来ることをだしに使わせてもらった。
「ねえ鳴……そういう理由なら帰った方が良くない?」
意外な答えが衣織から返ってきた。
「私ね、愛夏さんはまだ鳴のことが好きだと思うの」
「え」
前にも衣織は同じようなことを言っていた。
でも、他に好きな男が出来たから別れるって切り出したのは愛夏だ。
「まあ、凛ちゃんを訪ねて来るわけだから、そんな話になるのか分からないけど……わざわざ訪ねてくることを元彼の鳴に伝えたのは、そういう事なんじゃないのかな?」
凛に限ってそんなこと……とは思ったが、あいつもなんか僕への態度とか変わってたし……なくもないか。
「愛夏さんが幼馴染じゃなかったら、凛ちゃんの親友じゃなかったら、ダメってなってたかもしれないけど……はっきりさせておいた方がいいよ、鳴」
確かに気になることはある。
衣織がはじめて教室に来た時のこと。
意味深なお願いのこと。
デートの夜のこと。
でも僕は、愛夏のことをあまり考えないようにしていた。
「衣織、僕はもう愛夏とは……」
「もちろんそうよ、私の彼氏だもん」
「衣織……」
「信じてるよ鳴」
めちゃくちゃドキっとした。そして衣織は続けざまに僕の耳元でささやいた。
「続きしたいし……ちゃんと帰ってきてね」
パーっと心が晴れた気がした。
悶々とした気持ちも何処かへ行ってしまった。
何かあるにせよ、ないにせよ、このままでは気持ち悪いのも確かだ。
僕はまた、衣織に背中を押された。
ありがとう衣織。
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