第63話 悶々とした日
僕は朝から悶々としていた。もちろん凛のせいだ。凛の裸と手に残るあのやわらかい感覚が忘れられない。衣織と話していても、なんかエッチなことを想像してしまう。今日はダメな日だ。
「どうしたの鳴? 頭ブルブルさせて 煩悩でも振り払ってるの?」
さすが衣織、遠くはない。
「いや……なんでもないよ」
まさか妹と一緒に風呂に入って、一緒に寝て、おっぱい触っちゃったなんて言えない。
「あ、わかった!」
「うん?」
「凛ちゃんがお風呂に入ってる時に、間違えて入っちゃって怒られたんでしょ?」
鋭い……遠からずだ。
「そ、そ、そ、そんなわけないだろ!? アニメじゃあるまいし……はは」
明らか動揺してしまった。
「ちょっ、本当だったの?」
「違うよ! そんなわけないじゃん!」
ジト目で僕を見る衣織。信じていただけていない。
「ふーん、凛ちゃん可愛いもんね」
「衣織……僕たち双子だから、さすがに……」
「あ……」
察してくれたようだ。
——今日は何をしていても、ダメだった。授業も集中できない。衣織と話していても上の空。部活でも集中力を欠いた演奏をしてしまう。完全に煩悩に支配されていた。
「鳴、今日おかしいよね? やっぱり凛ちゃんと何かあった?」
心配してくれる衣織。衣織には隠し事をしないと誓った。でも、昨晩のことは言っていい内容なのだろうか……。
でも、冷静に考えると僕は何も悪くない。普通にお風呂に入って、普通に自分のベッドで寝ていただけなのだから。
僕は意を決して、衣織に話すことにした。
話を聞いてもらうため膝枕をしてもらった、例の河川敷に寄り道した。
でも……悶々としちゃって……とか彼女に正直に話してもいいものなのだろうか。どん引きされないだろうか。
しかし、そのような行為の対象は、彼女でなければならないはずだ。
そして彼女にはそれを受け止める義務があるはずだ。
うん……ちょっと自分でも何を考えているのか分からなくなってきた。
とりあえず当たって砕けろ精神で、衣織に全部正直に話した。衣織も少し戸惑っているようだった。嫌われたらどうしよう……でもこんなこと、後でバレるより自分から話した方がいいに決まってる。
凛のやつが、衣織に面白おかしく全部話してしまうかも知れないのだから。
衣織は少し困った顔をした後、頬を赤く染め微笑みかけてくれた。
「つまり……鳴は……」
妙に間がある。なんかドキドキする。
「したいの?」
したいの……?
したいのってなんだ……?
ちょっと混乱してきた。
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