第61話 超ラッキースケベ

 父さんは別件の仕事で、当面はこちらに帰ってこれないそうだ。母さんも相変わらずで、しばらくは凛と二人暮らしになる。


 凛は家事が全く出来ない。つまり凛がいると僕の家事負担が増える。


「兄貴、飯まだ?」


 なのに催促だけは一人前だ。まあ、しばらくはこんな感じの生活が続くのだろう。


 ——「兄貴の飯は相変わらず美味いな。母さんと同じで見た目は残念だけど」


 僕もしっかり母さんの血を受け継いでいる。ちなみに凛のやつは僕と違ってテーブルマナーもしっかりしていて汚い食べ方ではない。


「あれ? 兄貴ちょっと食べるの上手くなったんじゃね?」


 衣織と付き合うようになってから、意識するようになったからだ。


「ちょっと練習してるんだよ」


「愛夏ならともかく、他の人はびっくりするもんな! まあ頑張れ」


 他人事のように応援された。



 ——洗い物は凛がやってくれるとのことなので、先に風呂に入っておこう。


 今日もどっと疲れた。


 毎日充実しているが、イベント事が多すぎて気が休まる暇がない。


 衣織と出会ってから、僕の平穏は完全に失われた。


 でも悪くない。


 どちらかと言えば嬉しいことのほうが多い。


 僕は湯船で少し寝てしまった。


 

 ——顔にお湯をかけられる感覚で目覚めた。


 そして目の前には凛がいた。


 僕と一緒に湯船に浸かっていた。


「ちょっ……凛!? お前何やってんだよ?」


「風呂入ってんだけど? それより湯船で寝たら危ないぞバカ兄貴」


「あ……ごめんごめん……って、違うよ! 何で僕と一緒に普通に風呂入ってんだよ!」


「だって、兄貴がいつまでたってもでてこねーし、様子見に来てみたら寝てるし」


「だからって一緒に入る事ないだろ! つか、僕たち……男と女だぞ……恥ずかしく……ないのか」


「はあ————っ? 何それ? 風呂なんかずっと一緒に入ってたじゃん」


 この子はいつの頃の話をしているのだろうか。


「いや、それは子どもの頃だろ……もう、僕たちは高校生なんだぞ!」


「何、兄貴……凛の身体見て興奮するわけ?」


 そりゃ……そんなにも成長していれば興奮もしますよ。


「見たいの?」


 う……見たい……見たいかもしれない……でもそんなこと言えるはずない……。


「ばか! そんなわけねーじゃん!」


 僕は風呂場から飛び出した。


 実の妹……しかも双子の妹に欲情なんかしたら目も当てられない。


 お風呂で体を休めるつもりが、どっと疲れてしまった。






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