第57話 アイドルユニット再び

 突然ですが僕は今ルナです。


 結衣さんが掲げた、夏合宿までに新入部員最低2人を達成する為に歌っています。


 しかも前回の比にならないぐらいギャラリーも集まっています。


 これは陰謀だ……。


 僕が学園SNSを見ないのをいいことに、今日のライブを告知したに違いない。


 しかも衣織とペアルック。


 もちろんデートの時に買ったTシャツだ。


 ライブの衣装とは聞いていたけど、せめて男として着たかった。


 それはそれとして、今日は新曲を披露する。ユニットでやると決まった時からずっと温めていた、スラム奏法を取り入れた曲だ。


 スラム奏法とは、打楽器のようにギターを叩き、リズム、メロディ、伴奏をギター1本でこなしてしまう奏法だ。


 あまり練習時間は取れなかったが、好意的なオーディエンスが集まるこの場は、反応を見るには最適だ。


 僕は演奏を開始した。まずは両手でボディを叩きリズムをつくる。


 オーディエンスが手拍子でそのリズムに合わせる。いい感じに乗ってくれている。さすがルナ人気。


 そしてフラメンコで使われる、見た目に派手なテクニックでギターを連打しイントロに入った。


『『お——!』』


 目をひいた事で、僕たちとオーディエンスの間にいいグルーヴが生まれた。


 衣織の歌が入るとこの場の一体感がさらに増し、異様な盛り上がりを見せた。


 いつもの衣織とまとう雰囲気が全然違う。僕は衣織にも火をつけたのかも知れない。


 ぶっちゃけ圧巻だ。コーラスもギターも衣織を引き立たせようとするとかき消されてしまう。


 これが歌姫の真の実力。


 アイドルの真の実力。


 彼女を愛する僕でさえ嫉妬してしまう圧倒的なカリスマ性。


 このままでは僕が埋もれてしまう。こんな格好をしてまでピエロで終わるなんて嫌だ。


 僕は初めて自分から衣織に仕掛けた。


 衣織も僕に負けじとグイグイ引っ張ってくる。僕はあえて誘いにのり、衣織と絡みあった。


『『うお——!』』


 曲が終わると大歓声に包まれた。ギャラリーも倍ほどに膨れ上がっていた。新曲の手応えを確たるものにした。


 第二回新入部員勧誘ゲリラライブは大盛況のうちに終わったが、本来の目的である新入部員獲得には至らなかった。


 かなぴー。


 

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