幼馴染にフラれた僕が何故か学園のアイドルに告白されて平穏な日々を失った

第54話 結婚前提の交際なら認めてあげるよ

　セッションが終わるや否や飛び出した学さんの爆弾発言。一体どう言うつもりなのだろうか。

「パパ、いきなりどうしたの？　何でいきなり結婚なのよ！」

「だって、衣織と鳴くんが結婚したら」

　結婚したら……。

「毎日家族でセッションできるだろ！」

「「へ」」

「だって、すっごい楽しかったよ！　こんなスリリングなセッションなかなかできないよ！」

　確かにスリリングだった。でも毎日こんなセッション……絶対に体がもたない。

「衣織の話は大袈裟じゃなかったね。その若さでこんなにエキサイティングなプレイができるギタリストがいるとは思ってもみなかったよ」

「そんな……恐縮です」

　高評価でよかった。こんなトッププロに認めてもらえるなんて素直に嬉しい。

「でも鳴くんは、よほど衣織のことが好きなのね」

「「え」」

「ママ！　い……いきなり何を！」

「だって、あんなに優しく包み込むような演奏されちゃ……ね」

　2人で顔を見合わせて赤面した。

　佳織さん鋭い……僕が意識していたことを全部見透かしている。

「2人は付き合ってるんだろ？」

　学さんからど直球な質問が来た。

「……はい、衣織さんとお付き合いさせていただいてます」

　散々シミュレーションしたがここはやはり無難な挨拶で……。

「結婚前提の交際なら認めてあげるよ」

「「え」」

「あら、嫌なの？」

「いえ！　全く！　むしろ嬉しいです！」

「じゃ、決まりだね」

「ちょ……勝手に決めないでよ！」

「あら、嫌なの？」

「い……嫌じゃないけど……」

「嫌じゃないけど？」

「こういうのって……もっと時間をかけて、お互い盛り上がってから……」

「もう盛り上がってたじゃない、それにグズグズしてたら、取られちゃうわよ？」

「そうだよね」

　押しの強い2人だ。衣織の押しの強さは2人ゆずりだ。

「う……ぅぅ」

　衣織もタジタジだ。

「まあ、あとは2人でゆっくり話し合って決めてよ。僕は結婚前提の付き合いしか認めないからね！」

「そうね、じゃママもそうしようかしら」

「う……ぅぅ」

　なんか困ってる衣織も可愛い。

　僕たち2人を残して学さんと佳織さんはスタジオを後にした。

　僕的には結婚前提でも問題ない。

　愛し合う以上、行き着くところはそこなのだから。

　衣織はどう思っているのだろうか。