第51話 音楽一家

 程なくして衣織が迎えにきてくれた。そして先ず、ご両親の待つリビングに案内された。


「やあ鳴くん、僕が衣織のパパだよ。よろしくね」


「あら、噂通りかわいい子ね。私が衣織のママよ。よろしく」


 とってもフランクだった。緊張して損したまである。


 衣織パパは金髪のイケメン、まるでチャラ男だ。ママの方も負けておらず、茶髪ゆるふわロングの可愛い系女子。ちょっと大人な春コーデをバッチリきめている。


 うん?……違う違うそうじゃない……この2人は。


「窪田 がくさんに、窪田 佳織かおりさん……」


「お、よく知ってたね僕たちそんなにメジャーじゃないのに」


 いやいやいやいや、メジャーじゃないどころか世界でも指折りのジャズピアニストとジャズシンガーだ。それに学さんは多くのアーティストへ楽曲を提供している。僕ら世代で学さんの曲を知らないヤツはいないんじゃないかってレベルだ。


「それは、ご謙遜ですよ。お会いできて光栄です!」


「衣織、この子いい子ねママ気に入っちゃった」


「パパも気に入った」


「はは……」


 ちょっと困り顔の衣織だ。この2人の前だと学園では派手に見える衣織がちょっと地味に見えるぐらいだ。


「鳴くんはギターが凄いんだってね」


「いや、お2人のレベルからしたら全然ですよ」


「衣織はパパにも負けてないって言ってたわよね」


「え……なんて恐れ多い!?」


「それは確かに言い過ぎたかもしれないけど、鳴のギターは凄いわよ」


「それほど凄いのなら一度セッションしてみたいよね」


 体が震えた……世界のトッププレイヤーとセッションできるだと……。


「本当ですか!?」


「本当だよ、なんなら今からやってみる?」


 願ってもない申し出だ……でも……。


 さっき、これからは衣織を第一に考えると言ったばかりだし……。


「やりましょパパ。鳴のすごさを知るといいわ」


 杞憂だった衣織もやる気満々だ。


「あ、でもギター」


 衣織を追いかけるためにギターは部室に置いてきたんだった。


「スタジオにあるのを使うといいよ」


 自宅スタジオ……流石にこのレベルになると持ってるよな。


 ひょんな事から世界のトッププレイヤーとセッション出来ることになった。


 心が躍る。


 期待と緊張で胸がはち切れそうだ。



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