第47話 鳴、はやく! 〜衣織視点〜

 学園SNSに乗っていないこと。私と鳴しか知らないはずのことを高見先生は知っていた。学園SNSに鳴のことを晒したのはきっと高見先生だ。それ以外説明がつかない。


「そうですよね……」


 私は適当な相槌で話を合わせる事にした。


「そもそも、彼は窪田さんの隣に立つ資格があるのですか?」


「資格って……私そんな大層な人間じゃありませんよ」


「何を言ってるんですか、窪田さんは才能に恵まれた完璧なアイドルですよ? それなりに相応しい相手を選ばないと」


「……あは、相応しいって例えば、どんな方ですか?!」


 って、しまった! 差し障りのない返しと思って不用意なフラグを立ててしまった。


「そうですね……」


 これは間違いなく来る。


「例えば私でしょうか」


 来た……。


 そして都合悪く人気のない場所だ。


「そう思いませんか?」


「先生だと……逆に私では釣り合いませんよ」

 

 我ながらナイス切り返し。


「そんな事ほありませんよ。むしろ私こそ窪田さんに相応しい」


 ドヤ顔で言われた。


 高見先生は女子からも人気の高いイケメン先生だけど……。


 超気持ち悪い。


「……先生、私には鳴でも勿体ないぐらいなんです」


 なんとか会話を違う展開に。


「おや、彼とは別れないのですか?」


「別れませんよ? 別れるはずないじゃないですか」


 先生は鳴と私を別れさせたかったのね……他人を巻き込んでまで……。


「なぜです? あのような裏切り方をされて」


 そんなことない。鳴は裏切ってない。


 ……だんだん腹が立ってきた。


「裏切ってませんよ鳴は……先生ですよね? SNSに鳴のこと晒したのは」


「な……なんで私がそんなことを?」


「そんなこと私は知りません」


「では、何を根拠に?」


「先生が鳴と私しか知らないことを知っていたからです」


「はっ……はあ、そんなことあるわけ「デートのこと何故、知っていたんですか」」


「皆んなに邪魔されるのが嫌で、デートの事は2人だけの秘密にしていたんです。先生……鳴のこと、ハメたんじゃないですか?」


 や……やってしまった。


 先生の様子が変わった……怖い……。


「何故やつなんだ、何故私じゃないんだ!」


 先生が取り乱し、私に摑みかかろうとした刹那。


「あなたが、そんなんだからですよ」


 鳴が先生の腕を掴み関節をキメていた。


「痛っ」


「鳴!」


「衣織、お待たせです」 


 何この演出……。


 狙ってたの?


 カッコいい……カッコよすぎるんだけど。


「先生、折りますよ? いいですか?」


「やめっ……やめてくれ」


 えっ……本当に鳴なの?!


「じゃぁ、もう2度と衣織に近付かないって約束できますか?」


 えっ……なんでそんなに男らしいの?!


「近付かない、約束する! 痛い、離してくれ」


「SNSの画像も削除していただけますか?」


「する! する! 削除する! だから折らないでくれ、ピアノが弾けなくなる」


 鳴は先生を解放した。


「先生、今の一部始終、動画に撮っておいたからな。変な気起こすんじゃねーぞ?」


 彼は確か鳴の親友のユッキーくん。


「は、はい」


「ユッキーありがとう」


「おう、気にすんな。あとは2人でよろしくな!」


「うん」


「おい、お前もお邪魔だ、行くぞ」


 先生はユッキーくんが連れて行った。


 これはヤバい……。


 普段の頼りなさはなんなの?


 私には、鳴に惚れ直すしか選択肢がなかった。



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