第45話 信じられない 〜衣織視点〜

 爽やかな朝が1通のメッセージで最悪の朝に変わった。


『衣織、おはよう学園SNS見て!』


 メッセージの主は幼馴染の孝太郎。何かと私を気にかけていてくれいる。


 私は孝太郎に言われるままに学園SNSを開いた。


「何これ!?」


 思わず声を上げてしまった。


 学園SNSの投稿が、鳴と愛夏さんの写真と、鳴と結衣の写真で埋め尽くされていた。


 私はスマホを手に取り、すぐに鳴に連絡をとろうとしたが思いとどまった。


 会って直接話さないと誤解を生むと思ったからだ。


 身支度を整えて、いつもの待ち合わせの場所に向かった。



 ——「鳴、これどう言うこと?」


 もっとソフトに聞こうと思ったけれど、鳴の顔を見ると無性に腹がたった。


「衣織、ごめんなさい、これには事情が……」


 事情だと? いいわけがましそうな鳴の態度に更に腹がたった。


「私、浮気は許さないって言ったよね?」


「はい……」


「なら、これは何? あの子だけじゃなく結衣とまで……アンタ一体何をやっていたの?」


 本当に何をやっていたのだろう。結衣は部活の仲間であり私の親友なのに。


「説明してくれるわよね……」


「はい……」


 取り敢えず愛夏さんとの事情を聞いた。腹立たしくはあるけど仕方のないことだと思えた。


「そう……それは分かったわ。今度からは先に教えてよ」


「はい」


「で、結衣の件は?」


 写真は2人とも制服だ。私とわかれた後、2人でこっそり会っていたことになる。


「ごめん衣織、僕からは言えない、結衣さんから話しがあると思うんだ」


 言えないだと……私の苛立ちがピークに達した。


「はあ————っ? それって何、どういう意味よ」


「やましい事は無いんだ、だから信じて欲しい」


「だからそれは、どういう意味よ!」


「ごめん衣織、結衣さんとの約束なんだ」


「パチ——————ン」


 最低だ。


 私の聞きたいのはそんな答えじゃない。


 親友と彼氏を疑うなんてしたくない。だから真実を早く知りたいだけなのに……。


 結衣からじゃなくて鳴の口から聞きたい。


 なんで私の気持ちが分からないの?


 約束って何よ。


 それでやましくないなんて、どう信じればいいの?


 なんで隠し事をするの?


「信じられない、もういい!」


 むしゃくしゃが止まらなかった。


 しばらく鳴の顔は見たくない。




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