第44話 四面楚歌

 この日の学園は四面楚歌だった。


 上履きや自分の席への悪戯、無視、足を引っかけられること、廊下での体当たり、それも1人や2人じゃない。きっと青あざだらけだろう。


 SNSでのバッシングも苛烈を極めた。ありとあらゆる嫌がらせを受けた格好だ。


 でもユッキーだけは僕の味方でいてくれた。


「なんか思ったよりキツそうだな大丈夫か?」


「うん、覚悟はしていたけど……中々くるね」


「で、肝心の窪田先輩とはどうなんだ?」


「完全に怒らせてしまったよ」


「で、この画像か」


 さっき衣織にビンタされた時のものだった。


 あの場所は学園の生徒があまり通らない場所だ。それに今日はウチの生徒は見かけていない。


 盗撮されている。


 一体誰が、何の目的で……。


 って目的は僕を陥れる為か……それとも衣織?


「どうしたんだ鳴?」


「それ、盗撮だと思う」


「そりゃ盗撮だろうけど」


「違うんだ、あの時この場所にウチの生徒は誰もいなかったはずなんだ」


「本当かよ……」


「うん」


 ユッキーはしばらく考え込んでいた。


「なら、しばらく窪田先輩から目を離さない方がいいかもな」


「なんで?」


「窪田先輩のストーカーって可能性もあるだろ?」


 ……それは。


「確かに」


「おそらく犯人は学園の関係者だ。学園SNSを使っている時点で間違いないだろう。学園では鳴がべったりだろ? 犯人は邪魔者の鳴を排除したかったんじゃないのか?」


「ユッキー……」


 言われてみれば、その可能性は高い。なんてったって衣織は学園のアイドルなのだから。衣織にべったりの僕を排除したくなるというのも頷ける。


 僕は結衣さんにメッセージでこの事を伝え、衣織を気にかけて欲しいとお願いした。もちろん結衣さんは快く引き受けてくれた。


 ちなみに結衣さんは衣織に事情を説明しようとしたが、受け合ってくれなかったらしい。


 完全に選択を誤った。あの時に僕が話していれば、こんなにもこじれていなかった。




 ——昼休み。


 当然のように衣織は現れなかった。


 そして部活にも。


 ユッキーの推測が正しかったら、衣織の身に危険が及ぶかもしれない。


 僕は慌てて部室を飛び出し、衣織の後を追った。



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