第34話 楽器屋デート

 今日は日曜日。


 快晴。


 デート日和。


 色々あったが、ついにこの日を迎えた。


 結局デートプランは背伸びをせず、会ってから一緒に決めることにした。


 待ち合わせ場所は、衣織に告白した日に結衣さんと待ち合わせた場所だ。


 この界隈だと、あそこが1番分かりやすい。


 僕は前回と同じく30分前に到着した。


 待ち遠しかったのもあるが、普通に時間を読み誤った。



 ——恋愛なんてもういらない。


 愛夏にフラれた時は本気でそう思っていた。


 でも今は楽しみで仕方ない。


 案外僕は、恋愛脳なのかもしれない。



 ——「あれ、鳴早くない?」


 僕が到着して10分も経たないうちに衣織がやって来た。


 私服姿の衣織。


 前回は衣織に会えただけでテンションが上がってしまい、それどころでは無かったが、見ているだけでドキドキしてしまう学園のアイドルの春コーデ。


 僕は幸せ者です。


「時間を読み違えて早く着いちゃいました。衣織は?」


「私はこの前、弦買いそびれたから、先に買っておこうと思って」


 前にも聞いたようなセリフだ。


「なるほど、じゃ楽器屋行きます?」


「うんそうね、楽器屋デートなんて私たちらしくて良いかもね」


 早速楽器屋に向かった。


 この間お騒がせした時に注意してきた店員さんが、少し嫌そうな顔をして僕たちを見ていた。


 しっかり覚えられているようだ。


「ねえ、鳴ってアコギの弦は何使ってるの」


「僕は、アコギもエレキも固めを使ってますよ」


「弾きにくくないの?」


「固い方がピッキングのニュアンスが出しやすいんですよ」


「ふーん、だから鳴のギターは表情豊かなのね。私も真似してみようかな」


「あっじゃあ、コレなんかおすすめですよ」


 服を選ぶように彼女とギターの弦を選ぶ。ナニコレ……楽器屋デート超楽しい。彼女と共通の趣味がある事が、こんなに尊い事だとは知らなかった。


「ねえ、鳴の使ってるピックって変わった形だったよね? 何使ってるの?」


「アレは国産メーカーが、こだわり抜いて開発した逸品ですよ」


「今使ってるのがしっくり来ないから、ピックも真似しようかな」


「このタイプが滑り止め付いてておすすめです」


 ピック選びがこんなにドキドキするなんて僕は知らなかった。


 趣味に関するウンチクを語っても嫌な顔ひとつされない。


 それどころか関心をもって聞いてくれる。


 趣味が合うって恋愛において、地味に重要だと感じた僕だった。



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