第33話 応援してあげたい 〜衣織視点〜

 はじめて私に出来た彼氏は、ひとつ歳下の真っ直ぐな男の子だ。


 彼はどんな時でも私の事を考えて、周りが見えなくなる事もしばしばだ。


 今もそう。


 私のためにデートプランを考えてくれていて、毎日寝不足な日々を送っている。


 私は彼に、無理しないように言ったのだけれど、彼はそれを言葉通り受け取らず、逆にプレッシャーを感じてしまったらしい。


 本当に真っ直ぐで可愛らしい男の子だ。


 でも、そんな彼も遂に限界を迎え、今日の部活の練習はボロボロだった。


 頑張っているのは分かるし、私としては嬉しい気持ちの方が強い。


 でも、それが周りに迷惑を掛けるレベルになると話は別だ。


 私は彼に少し厳しい言葉を投げかけ、気付きを促した。


 彼はそんな私の気持ちを汲み取ってくれたようで、素直に反省の色を見せた。

 

 部の皆んなには申し訳ないのだけれど、私も彼と一緒に帰る事にした。


 同じユニットのメンバーだってこともあるけど、真っ直ぐに頑張っている彼を応援したくなったからだ。


「ねえ鳴、何か私にして欲しい事ない?」


 彼は少し戸惑い赤面したようだった。思春期の男の子だから、何かいかがわしい事を想像してしまったのかも知れない。


「ひ……膝枕して欲しい……です」


 ひ……膝枕だと……。


 膝枕はイチャラブカップル、ド定番のイベントじゃないか。そんな必要女子力高めのイベント、私にこなすことが出来るだろうか。


「や……やっぱダメですよね」


 そんなことはないのだよ……ただ少し心の準備がしたいだけ。


「い……いいよ……してあげる」


「ありがとうございます!」


 彼は少し元気が出たようだった。


 わざわざ河川敷に移動するところに、あざとさを感じてしまうが、それっぽさと言うのは重要なのだ。


 膝枕をしてあげてからの事は、正直緊張であまり覚えていない。


 ただ彼の鼓動がやたら早かったのと、頭を少し浮かせていた事だけが印象に残った。


 私もだけど、彼もまだ膝枕を堪能できるほどイチャラブレベルが高くないらしい。


 言葉少な目だったが、彼のひたむきさが伝わって来たイベントだった。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る