第31話 鳴って本当にバカなんだから

 結局ひと晩中デートプランのことを考えていて、僕は朝方5時頃まで寝付けなかった。これが毎日続くとデートどこではなくなる。早ことプランを決定したいものだ。


 しかし、いくら寝不足でも学校はなくならない。

 眠い目をこすりながらいつもの場所で衣織と合流した。


「あれ鳴、寝不足?」


「え、何でですか?」


「目の下にクマができてるわよ」


 自分では気づかなかった。


「ちょっと調べ物してたら寝るのが遅くなってしまって」


「なになに、デートの下調べでもしてくれていたの?」


「え」


 鋭い!


「あ、その反応は図星ね」


「まあ、はい」


「嬉しいけどあんまり無理はしないでね、当日楽しめなくなっちゃうよ」


 多分これは、言葉通り受け取っちゃダメなやつだよな。


「え、あ、大丈夫です。任せてください」


 なんて言葉を交わしながら、いつものように刺さる視線を受けて登校した。


「ちっす鳴」


「ふぁぁ、おはようユッキー」


 朝一番から大きなあくびをして挨拶してしまった。


「うん、眠そうだな? なんかあったか?」


 さすが親友。鋭い。


「実はさ……」


 衣織とデートの約束をこぎつけたことをユッキーに話した。


「おー良かったな! でも、俺は協力できそうにないわ、その辺明るくないからな」


 予想通りの返事だった。ところでユッキーは好きな子とかいるのだろうか。


 とにかくユッキーが頼りにならない以上、自分で頑張るしかない。


 僕はそれからも夜な夜なデートプランを考え、寝不足の日々が続いた。



 ——木曜日、僕は部活で初歩的なミスを繰り返した。


「鳴、今日はもう切り上げよ」


「大丈夫です、まだ出来ます」


「何が大丈夫なの? そんな集中力の切れた状態で練習しても時間の無駄よ」


 何も言い返せなかった。


 完全に浮かれていた。


 放課後の貴重な練習時間を、僕の身勝手で無駄にしていたことを痛感した。


「鳴、ちょっと具合悪そうだし、先に帰ったら?」


 結衣さんにも無用な心配をかけてしまった。


「すみません、そうさせてもらいます」


 部室を出ると遅れて衣織も付いてきてくれた。


「私も帰るわ」


「ごめん衣織……なんか僕」


「本当よ、だから無理しないでって言ったのに」


「ごめん」


「でも、彼女としては嬉しいことよ。鳴って本当にバカなんだから」


 あの時の無理しないでは言葉通り受け取っていいいやつだった。


 衣織のいう通り間違えた深読みをして、僕は本当にバカだった。




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