第28話 ルナちゃんを探せ
翌日学園はルナの話題で持ちきりだった。突如現れた謎の美少女。名前以外のプロフィールは全て謎。生徒間でライブ動画が出回ったがクラスも学年も特定できなかった。
実はルナというのは偽名で、誰かの変装だという鋭い推測も飛び交っていた。
この話題が翌朝には全校に広まっているのだから、恐ろしいほどの情報拡散速度だ。
「おはようユッキー」
「ちっす鳴」
『『待ってたぞ音無!』』
教室に入るなり、男子達に囲まれた。前もって言っておくが、特別仲がいいわけではない。
「なあ音無、軽音部だったよな! ルナちゃん知ってるだろ?」
知ってるも何も僕だ。
「う……うん」
「ルナちゃんについて詳しく教えてくれ! 頼む!」
僕ですとは口が裂けても言えない。
「皆んな、なんでルナの事しってるの?」
少なくとも昨日のライブに彼らはいなかった。
「これだよ、昨日、窪田先輩とデュオしてたんだよ」
昨日のライブ動画だった。僕の黒歴史が映像として記録されていた。
「あれ……音無映ってないな、昨日は居なかったのか?」
「そっ……そうなんだよ、僕は部室で練習していたから」
「まあ、いいや……とにかく教えてくれ!」
「ゆ……結衣さんが連れて来たんだよ……だから僕はそんなに詳しく知らなくて」
僕は咄嗟に嘘をついた。
「結衣さんって、川瀬先輩のことか?」
「うん……」
「さすが川瀬先輩だな、やっぱ可愛い人は、可愛い人とつるむんだな」
確かに結衣さんは可愛い。
「いいなー音無は、彼女は窪田先輩だし、部活には川瀬先輩もルナちゃんもいるし……美女だらけじゃねーか!」
ルナは僕だけど。
「皆んなも軽音入ればいいじゃん」
「無理だよ、俺、楽器弾けねーし」
そうなんだよ、軽音にはまずその壁がある。
男子たちは僕がルナのことを知らないと知ると、そさくそと去っていった。
「お疲れ……」
「うん……ありがとう」
ユッキーのフォローありがたい。
「ちょ、俺トイレ行ってくるわ」
「うん、授業遅れるなよ」
ユッキーが離席すると、間をおかずに愛夏がやって来た。
「ねえ、これ鳴でしょ?」
ルナの動画だった。
「皆んなの目はごまかせても、私の目はごまかせないからね」
さすが元カノ……鋭い。
「頼む、皆んなには内緒で」
「内緒にしててもいいんだけど、鳴にお願いがあるの」
「え」
「聞いてくれるかな?」
「な……何のお願いだよ」
「また、その時がきたら言うね」
元彼の僕に、何のお願いがあるんだ。その時っていつだよ。
愛夏の不可解な行動に混乱する僕だった。
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