第26話 新入部員勧誘

 わが軽音部は今年は不作で、1年の新入部員が僕しかいない。衣織目的でもっと入部して来てもいいと思うのだが……。


 もしかすると衣織がいることで『敷居が高いと思われているのかも』と言うのが皆んなの弁だ。


「と言うわけで、ストリートライブやって部員を勧誘しよう」


 結衣さんがストリートライブでの勧誘を提案してきた。機材の搬入出に手間はかかるが、アピールするには1番手っ取り早い。


「いいですね! でも外で音を出すなら学園の許可がいるんじゃ?」


「うん、だから今日は窪田と君のペアでアコギでやってもらう」


「古谷さん……衣織が出てしまったら敷居の高さが解決できなくないですか? それに軽音らしさもアピールできないように思えます……」


「いいのいいの、これは作戦の第一弾。まず手軽な戦法からってね」


「美咲さん……分かりました」


 何故だろう。心なしか皆んなニヤニヤしている気がする。


「決まりね、じゃあ鳴はこれに着替えてくれる?」


 うちの女子の制服だった。


「え——っ、あれって本気だったんですか?」


「当たり前じゃない」


 実は、僕は歌うと非常に声が高い。この間のカラオケでそれを皆んなに知られてしまい、今度女装して衣織とデュオすることを、半ば強引に約束させられてしまったのだ。


 まさかなんでもない平日に、その約束を発動されるとは思ってもみなかった。


「マジですか……」


「マジよ!」


 結衣さんの目はマジだった。


「衣織! いいんですか! そんな色物みたいなこと」


「いいんじゃない? 私の話し聞いてなかった鳴が悪いんだし」


 衣織は今朝、このことを話してくれていたようだ。煩悩の塊で本当にごめんなさい。


 結衣さんには衣織の件で大変お世話になっている。断れるはずもない。


「わ……分かりました」


 そして女子部員たちの手によって僕は魔改造された。


 ——「うおっ……これは予想以上の仕上がり……」


「なんですか、結衣さんどうなってるんですか?」


『『か……可愛い……』』


 部員のみんなが声を揃えて僕を可愛いと言う……一体どんな仕上がりなんだろう。


 僕は恐る恐る鏡張りの壁で自分の姿を確認した。


「こ……これが僕……」


 自分で言うのもなんだけど、普通に可愛かった。


 べ……別にそっちの趣味に目覚めたわけじゃないんだからね!



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