第24話 おめでとう
僕たちは今カラオケボックスにいる。
ちなみに2人っきりではない。
結衣さんをはじめとする、軽音部の皆んなも一緒だ。
何でこうなった!
——告白の時までさかのぼる。
「何で鳴が泣いてるのよ」
「分かんないです……嬉しくて涙が止まらなくて」
衣織さんはすっかり泣き止んでいた。
「慰めてあげようか?」
上目遣いの衣織さん。ヤバい、可愛い。
僕の心臓は今日止まってしまうかも知れない。
「ぜ……是非」
「ダメー」
「えーなんで……」
「だって、結衣とイチャコラしてたじゃん」
「あ、あれは結衣さんが……」
「言い訳なんて男らしくないわね」
いつもの衣織さんに戻ってきた感じがする。
「鳴、付き合ってあげるけど浮気は許さないからね」
「は……はい、それはもちろん」
「幼馴染みのあの子とも、ダメだからね」
まあ、愛夏とそんなことにはならない。
「もちろんです」
「あれ、今ちょっと間がなかった?」
「そ、そんなことは……」
「まあ、いいわ。気を付けてね」
「はい……」
「とりあえず、1回謝って」
「え」
「結衣とべったりしてて……私、悲しかったんだから」
「ご、ごめんなさい」
胸の誘惑に負けたことに、罪悪感があった僕は素直に謝った。
「鳴、時間あるんでしょ?」
「はい、もちろん」
「じゃデートしよっか」
「はい!」
完全にいつもの衣織さんに戻った。
その時、強い風が吹いた。
そういえば、衣織さんとの出会いは春一番が運んできてくれたのだった。
あの時と違って衣織さんのスカートはめくれ上がっていないが、目を気にしている。ゴミでもはいったのだろうか。
「大丈夫ですか?」
「うん、なんかゴミが入ったみたい」
「僕見ますよ」
ちょっと待て……この距離って。
衣織さんの顔が真っ赤だ。僕も紅潮しているのがわかる。
僕たちは少しフリーズした。
き……キスは……流石にダメだよな。
「なにやってんだよ! 早くしろよ」「馬鹿声出すな!」
「「え!?」」
周囲を見渡すと、結衣さんをはじめとする軽音部の面々が木陰に隠れていた。
「あははは、おめでとう!」
「ど、どういうこと!?」
「いやあ、面白いイベントだからつい、みんな呼んじゃった」
「面白くないわよ!」
『『2人ともおめでとう』』
——ってな感じだ。
少し気恥ずかしさはあるけど素直にうれしい。
結衣さん、皆んなありがとう。
そして……。
大好きだよ衣織。
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