第23話 しょっぱい告白

 結衣さんに相談して大正解だった。一時はどうなることかと思ったが結果オーライだ。


 神様、結衣様。僕はこのチャンス掴んでみせます。


「結衣にね、誘われたの」


 やっぱり結衣さん狙っていたようだ。色んな意味でありがとうございます。


「実は、僕が結衣さんに相談したんですよ。だからそれで……」


「鳴が……」


「はい、どうしても衣織に気持ちを伝えたくて」


 衣織さんはうつむいたままで、目も合わせてくれない。こんなにもしおらしい衣織さんを見るのは初めてだ。


「聞かないとダメ?」


「当たり前です……あの……少し歩きませんか?」


「う……うん」



 ——僕たちは近くの公園に移動した。もう人だかりが出来ることは無いだろうが、落ち着いて話がしたかった。


 自分の気持ちとも向き合えた。もう迷いはない。僕は衣織さんが好きだ。


「衣織」


「うん」




「僕は衣織が好きだ」




 言えた……やっと言えた。ちゃんと言えた。噛まずに言えた。



 衣織さんが言葉を発するまでのこの時間が、とてつもなく長く感じる。


 ドキドキもピークに達している。


 僕の心臓大丈夫か?!



「……ありがとう鳴」


 やっと笑顔になった衣織さん。

 

 でも次の瞬間には、僕の胸で声を殺して泣いていた。


「衣織……」


「ごめんね鳴……こんな嬉しい返事ならもっと早く聞けばよかった」


 僕は衣織さんをそっと抱きしめた。


「私、怖くなった……あんなに偉そうなこと言っといて、鳴に告白して返事を聞くのが急に怖くなった……ごめんね鳴」


 僕は衣織さんの事を何も分かっていなかった。


 学園のアイドルにして皆んなの憧れの的、常に凛としていて頼り甲斐がある先輩。


 僕は衣織さんに対してそんなイメージを抱いていた。


 でも実際はちがった。


 衣織さんは学園のアイドルとはいえ、普通の女の子なのだ。


 衣織さんだって思い悩んでいた。


 なのに僕は、辛いのは自分だ。自分だけが辛い想いをしていると勘違いしていた。




「衣織、僕と付き合ってください」



「はい」



 嬉しくて涙が止まらなかった。

 震えが止まらなかった。



 僕の告白はいろんな意味で少しスパイスが効いた、

 とても僕らしい、しょっぱい告白だった。




 

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