第22話 またまた修羅場です。

 事件は楽器屋で起こった。

 

 ずっと会いたかった衣織さんと、まさかのタイミングで鉢合わせしてしまったのだ。


 僕の隣には結衣さん。


 傍目には恋人に見えるであろう距離感とスキンシップ。誤解されても仕方がないシチュエーションだ。


「ふ……2人はそう言う関係だったの?」


 何とか取り作っている様子が見てとれる衣織さん。


「い……いやちが「そうだよ、知らなかった?」」


 僕の否定をあっさり肯定する結衣さん。


 そんなの僕も知らなかったです。


「そ……そう、そう言う事だったの」


 衣織さんの表情に影がさす。


「だって衣織、鳴に興味ないんでしょ? 盛大に告白しておいて、そのあと放ったらかしなんて鳴が可哀想だよ」


 おや?


「そ……そんな事ないもん!」


「あるよ。ウチも2人の様子見てたけど、衣織さっぱりだったじゃん」


「それは……」


「それは何?」


「……」


 衣織さんがボソッと何か言ったが聞こえなかった。


「聞こえないよ? それでも歌姫なの?」


 結衣さん容赦ない。実は怖い人なのか。


「……たの」


「聞こえない」


「怖かった……の」


「聞こえない」


 今のは聞こえました……。


「怖かったのよ!」


「何が怖いのよ」


「だ……だって……もし、聞きたくない答えだったらと思うと」


「乙女か!」


 乙女だと思います。


「だそうよ、鳴」


「え……」


「ゆ……結衣」


 もしかして、結衣さんこれを狙っていたのか?


 結衣さんが僕の背中を押し、衣織さんの方へ突き出してくれた。


 久しぶりの衣織さん。なんだか照れくさい。




「衣織……聞いてほしい」


 衣織さんは目を伏せたまま頷いた。


「あのー」


「「うん?」」


「すみません。他のお客様の迷惑になるので、他所でやってもらってもいいですか?」


 気がつくと周りに人だかりができていた。


 これは軽く営業妨害だ。


「「すみませんでした」」


 ——僕たちは店員さんに深々と頭を下げて落ち着ける場所へ移動した。


「あははは、面白かったね」


 あっけらかんとした結衣さん。


「面白くないわ」


 少し不機嫌な衣織さん。


「まあウチは帰るから2人でデートでもしながら解決しな」


「結衣さん」「結衣!」


「あんまり世話焼かせないでね」


 結衣さんの計らいで、衣織さんに告白できるチャンスが舞い込んできた。


 このチャンスを逃したら男じゃない。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る