第20話 募る不安

 一世一代の覚悟に肩透かしを食らった形になったが気持ちは変わらない。僕は次のチャンスである昼休みに備えて英気を養った。


 ——しかし、昼休みになっても衣織さんは現れなかった。ただスマホに「ごめん、先生に用事たのまれた」とメッセージが残っていた。


 もしかして嫌われたのだろうか?


 表裏のない衣織さんに限ってそんな事はないと思うが不安な気持ちでいっぱいだ。


 ご飯が喉を通らない事には慣れっこな僕だが、今日はいつもの比ではない。


「はあ」思わず溜息が漏れた。


「お昼休みに、教室にいるの久しぶりね」


 声の主は愛夏だった。


「愛夏……」


「ねえ、鳴、ちゃんと食べてる?」


 お前が言う……と思ったが、言葉を飲んだ。


「ボチボチだよ」


「ちゃんと食べないとダメだよ」


 お前が言う……と思ったが、言葉を飲んだ。


「うん、なるべくそうする」


「ねえ、鳴。窪田先輩と付き合うの?」


 元カノにされたくない質問ランキング上位の質問だ。でも愛夏は元カノであると同時に幼馴染みだ。恋人でなくなってもその関係は変わらない。


「うん、僕は付き合いたいと思ってる」


「そっか……」


 気のせいか、愛夏が一瞬悲しそうな表情を見せた。


「そっちはどうなんだよ。上手くいってるのか?」


「え……ん——どうなんだろうね……」


 煮え切らない返事だ。もしかして上手くいっていないのか。


「私は大丈夫だよ。だから鳴は頑張ってね」


 元カノに恋の応援をされるのは、何とも言えない複雑な気分だ。


「うん、ありがとう。愛夏も上手くやれよ」


「ふふっ、ありがとうね」


 愛夏の恋を応援してやれるぐらいの余裕は出てきた。これも衣織さんのおかげだ。


 そう言えば、愛夏は誰と付き合っているのだろう。今まで気する余裕なんてなかったが、僕の知り合いなのだろうか。



 ——部活が終わり、衣織さんに告白できる、今日のラストチャンスがやってきた。


「衣織、大切なはな「ごめん鳴、私今日はちょとお姉ちゃんと約束してるの、先に帰るね」」


 取りつく島もなく、衣織さんは帰ってしまった。もしかして、避けられているのだろうか。


 更に不安が募る僕だった。

  

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