第19話 告白……
2年生の校舎なんてはじめてだ。そんな、はじめて訪問する上級生の校舎で告白しようとしているのだから、僕もなかなかのキワモノだ。
ここでも容赦なく刺すような視線に襲われたが、僕は周りには目もくれず、衣織さんの教室を目指した。
「鳴——」
僕を呼び止める声は、結衣さんだった。
「聞いたよ、今朝は凄かったらしいね」
ニタニタする結衣さん。まあ僕でもそうなる。
「どうしたの? こんなところで」
「衣織さんに会いに来ました」
「おや……もしかして……今朝の続き?」
「はい」
『『お——!』』
2年生の皆さんも聞き耳を立てていたようで、周りがザワつきはじめた。
「いい顔してるね! ウチが案内してあげようか?」
「はい、ありがとうございます」
僕の進む後ろに人だかりができる。かなりの数のギャラリーだ。
僕は、ほんの少しだけ後悔した。
勢いに任せてここまで来たはいいものの、こんな大騒ぎになるのは流石に想定外だった。
「衣織はね、そこの教室だよ」
いよいよ、衣織さんの教室だ。緊張がヤバい。
「どうする鳴? 呼んできてあげようか?」
「いえ大丈夫です。自分でいきます」
「そっかそっか」
自分で決めたことだ。
衣織さんの教室に入ろうと覚悟を決めたその時。
「あれ、鳴どうしたの?」
ばったり衣織さんと鉢合わせした。かえって好都合だ心の準備は出来ている。
「あの、衣織……たいせ「あ、ごめん後にしてくれない?」」
「え」
「もうすぐ授業だし、用があるなら昼休みでいい?」
「そんなに時間はとらせないけど……」
「ごめん、急いでるから、また昼休みにね!」
衣織さんは足早にその場を立ち去ってしまった。
——「えっと……なんというかアレなんだろうね」
アレってなんだ?
「アレって?」
「聞いちゃダメだよ」
もしかして、お手洗い?
聞いちゃダメということで、これ以上の詮索はやめた。
「鳴……どんまい」
「ありがとうございます……」
相当な覚悟をもってやってきた。
でも、僕の人生初の劇的な行動は、盛大な肩透かしで終わった。
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