第18話 自己解決野郎

 教室に入ると男子のみならず、女子からも冷ややかな視線が送られた。


 衣織さん告白事件は既に皆んなの知るところだったのだ。


 あれほど劇的な告白をした衣織さんに、何も応える事が出来なかったのだ。みんなが冷ややかな視線を送るのも頷ける。


 僕は誰の目から見ても煮え切らないヘタレだ。


「ちっす鳴」


「おはようユッキー」


「見てたぞ鳴、やったな! 朝からラブコメ全開だな」


「あはは……」


「で、どうするんだ? 学園のアイドルにあそこまでさせといて、断る選択肢はないよな?」


 教室中が静まり返った。みんな聞き耳を立てている。


「ど……どうだろう……」


 またしても僕はヘタレなことを言ってしまった。周囲から舌打ちが聞こえた。


「うん? なんでだ? 鳴も好きなんだろ?」


「うん、勿論そうなんだけど……」


 絶望していた僕に、衣織さんは道を示してくれた。

 色んな想いが入り混じっているけど、多分、僕は衣織さんが好きだ。


 でも、ふとした時に負の感情が芽生える。


 衣織さんに依存しているだけではないのか?

 愛夏の代わりに利用しているだけではないか?


 そんな考えが、気持ちにブレーキをかける。


「あ、鳴お前……自己解決野郎の顔になってるぞ」


「えっ」


「「えっ」じゃねーよ、またどうせ自問自答で、ウジウジ考えてんだろう?」


 確かにそうだけど……。


「なあ、鳴。昔からお前の自己解決野郎モードで、うまく行ったことがあったか?」


「あ」


「「あ」じゃねーよ、いつも俺か愛夏が尻ぬぐいしてたんだよ。知ってるだろ?」


「うん……」


「なあ、鳴。くだらないこと考えるな、勇気を出せ、素直になれ、前にすすめ」


「ユッキー……」


 ユッキーの言う通りだ。


 そんなの、僕が思い込んでいるだけだ。


 衣織さんは「好きかもしれない感情に蓋をしたくない」と言っていた。


 僕も蓋をしたくない。


 心に火がついた。


「ユッキーありがとう、僕行ってくるよ」


「え、行くって今からか?」


「うん、衣織さんの気持ちに応えてくる」


「お前って、そんな情熱的なやつだったっけ?」


「ううん、ビビってる。ほら」


 僕はユッキーに震える手を見せた。


「本当にビビってんのな、まあ頑張れ!」


「ありがとう」


 授業がはじまる迄、まだ時間がある。


 僕は衣織さんの元へ急いだ。


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