第17話 その日は突然やってきた
今週を乗り切ればゴールデンウィークを迎えようとしていたある日、事件は起こった。
「鳴、大切な話があるのだけど、良いかな?」
「大丈夫ですけど、今ですか?」
「うん、今聞いてほしい」
通学路で大切な話。
僕はてっきり、今日の部活で合わせる曲の話だと思っていた。
「ねえ、鳴。やっぱり私、鳴が好きみたい」
「あ、そうなんですね」
「…………」
って……。
あれ……。
今、衣織さん何て言った?
僕は足を止め、真顔で衣織さんと向き合った。
衣織さんは赤面している。
周囲の男子の動揺も激しい。
スマホを落として画面がバキバキになっている者。
その場で泣き崩れてしまう者。
僕に刺すような視線を送る者。
これ迄にない過剰な反応だ。
でも……。
1番動揺しているのは僕だ。
だって、何の心の準備もしていなかったのだから。
「い、衣織……今なんて……」
「は……恥ずかしいんだから、何度も言わせないでよ」
伏し目がちに視線をそらす衣織さん。やばい可愛い。
「ご、ごめん衣織、大切な話って、そんな話だとは思っていなかったから……」
ドキドキが加速して心臓が飛び出しそうだ。
「し……仕方ないわね。もう一回だけ言ってあげるから、しっかり聞いてよ」
「ちょっ、こっ、ここでいいの?!」
「もう決めたの、どこで言っても一緒でしょ?」
それは確かにそうだけど、皆んなの見てる前で告白するなんて……。
僕なら生まれ変わってもできない。
「私、鳴が好き」
いつか来るかもしれないと思っていたその日は、突然やってきた。
でも、僕は答えを用意していなかった。
好きか嫌いかの2択なら好きだ。
だけど、今の気持ちのままでは付き合えない。
綺麗事かもしれないが、愛夏を忘れるために衣織さんを利用しているみたいだからだ。
「返事は今すぐじゃなくていいわ」
「衣織……」
「でも、ちゃんと聞かせてね」
衣織さんは僕の様子を察してくれたのだろうか。
「はい」
僕に考える猶予ができた。
学園のアイドルに告白される。
今1番好きな女性に告白される。
本来なら「ひゃっほう」な出来事だ。
もう傷つきたくないし、傷つけたくない。
臆病な自分が嫌になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます