第15話 アイドルと部活
今日はすでに色々あってお腹いっぱいなんだけど、もう一つ大事なイベントがある。
部の皆んなとの初顔合わせだ。
「音無 鳴です。パートはギターです。今日からお世話になります」
拍手をもって軽音部に迎えられた。今年の新入部員は今のところ、僕だけのようだ。
「音無くんよろしく」
「俺たち4人でひとつのバンドなんだ、俺は3年の古谷だ」「俺も3年、林です」「2年の車谷です」「どうも2年の田中です」
「鳴、よろしく」
「2年の美咲よ」「私も2年、智子だよ」
「んで、ウチが部長の結衣ね、私たち3人でスリーピースバンドを組んでるよ」
「結衣さん、2年なのに部長だったんですね」
「そうだよ、前部長のご指名でね」
「川瀬、音無くんは、うちで面倒みればいいのかな?」
「あーっ鳴はもう決まってるの、古谷先輩」
「なんだ、スリーピースに限界でも感じたのか」
「うんにゃ、違うよ」
「違うって、音無くんもソロなのか?」
「違うわ、鳴は私とユニットを組むの」
『『え!』』
衣織さんの発言に驚く部員たち。それほどまでに衣織さんはソロにこだわっていたのだろうか。
「窪田さんそういえば、音無くんと噂になってたよね……だからかい?」
衣織さんは車谷先輩を睨みつけた。
「車谷くん、私がそんな理由でメンバーを選ぶと思うの?」
「あ、いや、ごめん……下世話だったね」
車谷先輩が完全に気圧された。
名前の呼び方ルールどうなってんだろ。普通に苗字で呼びあってるけど。
「つか、衣織に認められるぐらい、鳴のギターってすごいの?」
「すごいよ美咲」
「聴いてみたい!」
「そうだよね、挨拶がわりに衣織と鳴でやってもらってもいいかな?」
僕と衣織さんは顔を見合わせた。
「「もちろん」」
——今日の衣織さんの歌は一味違った。
なんて表現するのが適切なのかはわからないが、ぐいぐいと引っ張られる感じだ。
昨日は、ヒリヒリする緊張感の中で演奏していたのだが、今日はまるで衣織さんが僕を包み込んでくれているかのようだった。
一度は諦めた夢だけど、衣織さんとなら何処迄も行ける気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます